とま)” の例文
屋敷の左手に大きな山毛欅ぶなの木が幾株かある。四時頃になると、もの淋しい鴉の群はそこへ来てとまり、かしましく啼きたてる。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
どれもこれも黒っぽい地味な服を着て、もっそりとした恰好で坐っているので、ちょうど、黒い大きい田鶴たづるでもそこにとまっているように見える。
木の上にとまつてゐる七羽の赤い小鳥を呼び入れてゐる図案で、すべてが、色の珍らしいさま/″\の布を貼り合はせて画にしてあるのであつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
檣兵として、彼は、下なる雜沓、甲板に群れてゐる兵士等から離れて、帆綱の中へ、鳥のやうにとまつて日を送つてゐた。
ややしばらく凝視みいっているうちに、彼の心の裡のなにかがその梢にとまり、高い気流のなかで小さい葉と共に揺れ青い枝と共にたわんでいるのが感じられた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
崖の草枯れきばみ、この喬木の冬枯ふゆがれしたこずえに烏がむれをなしてとまる時なぞは、宛然さながら文人画を見る趣がある。
それをくと、とりりてて、みぎあし黄金きんくさり受取うけとり、金工かざりやのすぐまえとまって、うたいました。
その鳥が飼主の手頸にとまっているのがその鮮かな羽毛の色でそれと見分けられるような気さえした。
けれどもマリちゃんはじっとすわって、ないていました。するととりんでて、家根やねうえとまった。
何でもないことです。——先達せんだってあたしがこちらへ渡ってくる途中でね、鴎が一匹、小さな枝切れへとまって、波の上をふわりふわりしていたんですの。ちょうど学校なぞにある標本を
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
……言うまでもない、それは、ゆびをみな縛りつけ、その先に剃刀の刃でも結いつけてあるのさ。趾を縛っておけば、途中でとまれないから、襲撃をすませると真直に自分の家まで帰ってくるほかはない。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おくみはそこらに一匹とまつてゐた蝿を手先で追うて、そこ/\にこちらへ下つた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
とり水車小舎すいしゃごやまえにある菩提樹ぼだいじゅうえとまって、うたしました。
鳥はいろいろの形をして一つゞきにとまつてゐる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)