格天井ごうてんじょう)” の例文
と思いながら美事な香木で作った格天井ごうてんじょうを見ていましたが、熱い熱い涙がおのずと眼の中に溢れて、左右にわかれて流れ落ちました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
これは後で見ると、悉く下の大広間の格天井ごうてんじょうに描かれた、天人てんにんの眼や、蝶々ちょうちょうの羽の紋や、牡丹ぼたんしべなどであったということです。
格天井ごうてんじょうの隙間から、逆様の夕立ちみたいに射し込む光線の糸。その外には何の光もない、べら棒に広いがらんどうの暗闇だ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やがて立ち上がって、一人一人に挨拶あいさつをするうちに、自分は控所にある洋卓テーブルやら、絨氈じゅうたんやら、白木しらき格天井ごうてんじょうやらを眺めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たそがれ頃まで、南の狭間はざまで小銃の音がかなり烈しく聞えていた。時折、格天井ごうてんじょうもゆすれるような大鉄砲の音がじる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高い高い穹窿アーチ形の格天井ごうてんじょう……そこに吊された何千年来のものともわからぬ古風な龕灯がんどうや、どっしりとした井桁の枠のまったこれも穹窿形の円窓や
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
椿岳の大作ともいうべきは牛込の円福寺の本堂の格天井ごうてんじょう蟠龍はんりょうの図である。円福寺というは紅葉の旧棲たる横寺町の、との芸術座の直ぐ傍の日蓮宗にちれんしゅうの寺である。
焚火に照らされた中空の老樹大木が、枝を張って、天空に竜蛇の格天井ごうてんじょうが出来ているように見えます。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
当時に有名なうての番匠川越の源太が受け負いて作りなしたる谷中感応寺の、どこに一つ批点を打つべきところあろうはずなく、五十畳敷格天井ごうてんじょうの本堂、橋をあざむく長き廻廊、幾部いくつかの客殿
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
格天井ごうてんじょうを漏る昼の月影のごとく、ちらちらと薄青く、また金色こんじきの影がさす。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殿村夫人は三笠探偵に掴まれていない方の手で、広間の格天井ごうてんじょうの真中を指さしながら、さも嬉し相な、気違いみたいな笑顔で、一同を見廻すのであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
武蔵は、なるべく眼をうごかすまいとしても、つい、格天井ごうてんじょうや、橋架きょうかの欄干や、庭面にわもの様や、欄間らんま彫刻ほりなど、歩くたびに、眼を奪われてしまう気がする。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相好そうごうは変っていますが、紛れもない浪人梶四郎兵衛、娘のお勇と同じように、胸に両刃の剣を突っ立てられて、怨み多いうつろな眼に、格天井ごうてんじょうの下手な丸龍まるりゅうの絵を睨んでいるではありませんか。
と、私はもう一度、格天井ごうてんじょうに眼を放ちました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして眼をひらくと、四壁の金泥きんでいと絵画は赤々とかがやいていた。格天井ごうてんじょう牡丹ぼたんの図も炎であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
格天井ごうてんじょうの絵でもながめているかのような風である。その眼のすずやかさ。眉目の優しさ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
憤然と、格天井ごうてんじょうを仰ぐと、彼女は、子たちを抱えたまま良人のそばへ身をすりよせた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のみを持たせては、不思議な腕を持っていて、天稟てんぴんと申しましょうか、格天井ごうてんじょうの組みとか、欄間細工らんまざいくなどの仕事になると、平次郎でなければほかの大工にはできないというので、仲間の者も、つい
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひと気もない大広間の格天井ごうてんじょうには、もう夕暮のかげが濃い。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)