枕詞まくらことば)” の例文
このやくもたつといふ言葉ことばが、うたうへでいふ枕詞まくらことばなのです。すなはちこの場合ばあひは、いづもといふ言葉ことばおこすための、ゑことばなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「級照」「剌竹」ともに枕詞まくらことばであるが、他は解を要するまでもなかろう。十七条憲法や義疏ぎしょの根底にひそむ精神の発露と申していいであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
坊さんがお経を読む時に、唱える枕詞まくらことばでもありません。南無とは、実に帰依することです。帰みょうの精神です。相手を絶対に愛し敬い、信頼することです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
これよりくだっては、背皺せじわよると枕詞まくらことばの付く「スコッチ」の背広にゴリゴリするほどの牛の毛皮靴、そこでかかとにお飾をたやさぬところからどろに尾を亀甲洋袴かめのこズボン
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
こういう考えであります。枕詞まくらことばの「あしびきの」は「あしびき」と読みますが、これも「あしひきの」であって「ひ」というのは皆清音の仮名で書いてある。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
今や文壇の趨勢既に『万葉』『古今集』以来古歌固有の音律を喜ばずまた枕詞まくらことば掛言葉かけことば等邦語固有の妙所をしりぞけこれに代ふるに各自辺土の方言と英語翻訳の口調くちょうを以てせんとす。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
或いはまた「栲衾たくぶすま新羅しらぎの国」などとも謂って、白いという枕詞まくらことばにこのタクのふすまを用いていたのを見ると、是はおそらくは染めずに着たもので、今日謂うところの生麻きあさなどと同じく
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
枕詞まくらことばと称する不思議な日本固有の存在についてはまだ徹底的な説明がついていないようである。この不思議を説明するかぎの一つが上述の所説からいくらか暗示されるような気がする。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「あら玉」といっただけで、すぐに新年の意味になる。必ずしも「新玉」という字を当てるからではない。枕詞まくらことばなどという約束をえて、自由に活動するのは俳諧得意のところである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
いろいろな学者が「大鳥おおとりの」を枕詞まくらことばとして切り離し、「羽買山はがひやま」だけの名をもった山をいろいろな文献の上から春日山の附近に求めながら、いまだにはっきり分からないでいるようであります。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
石上は「ふる」の枕詞まくらことばです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
あまさかるは、やはり枕詞まくらことばで、ひなのひといふおこしてゐます。意味いみは、てんとほくかゝつてゐるといふことなんです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
こゝのあらたへのといふのは、やはり枕詞まくらことばです。たへは着物きものといふことで、手觸てざはりのあらいものが、あらたへなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其結果として、序歌が出来、枕詞まくらことばが出来た。交渉の緊密なものは、象徴的な修辞法になった場合もある。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)