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木像
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もくぞう
「そのほか、
慈眼大師の
銅製誕生仏、
釈尊苦行のお
木像、同じく
入涅槃像、いずれも、
稀代の名作にござりまする」
『
其處だツ、
日本男兒の
魂は——。』と
木像のやうに
默つて
居つた
武村兵曹は
不意に
叫んだ。
そもそも幕末の時に当りて
上方の辺に
出没したるいわゆる
勤王有志家の挙動を見れば、家を
焼くものあり人を
殺すものあり、或は
足利三代の
木像の首を
斬りこれを
梟するなど
顔の
色は、
日にやけて
黒く、その
目は、とび
出ているようで、いくらか、こわい
気がしました。お
寺へいくと、よくこんな
形をした、
木像の
仏さまがあるのを、わたしは
思い
出しました。
それより
漂流中いろ/\の
艱難を
經て、
漸く
此島へ
漂着した
迄の
有樣を
脱漏もなく
語ると、
聽く
人、
或は
驚き、
或は
嘆じ、
武村兵曹は
木像のやうになつて、
眼を
巨大くして、
息をも
吐かず
聽いて
居る