散々ちり/″\)” の例文
彼に喧嘩を吹きかけられた対手は見物が次第に散々ちり/″\になっても、そこを動こうともせず、やがてツカ/\と石子の傍へ近寄った。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
飛んだ災難でございました。それから散々ちり/″\になって奥方は会津に落ちて、会津から上方へ落ちて、只今駿府におでと聞きましたが、何う成行きましたか。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だが、その当時の秘蔵品は、今では散々ちり/″\ばらばらにちらばつて、容易に持主を捜し当てる事が出来なかつた。
充分したゝか打叩うちたゝきければ彼の男よこどうたふされしにぞ其間そのひまに又七と共に殘り二人の惡者わるもの散々さん/″\に打叩きける故みなかなはじと散々ちり/″\にげ行けりされば金は取られずまづ無事に其場を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旅順りよじゆん吉報きつぱうつたはるとともに幾干いくばく猛將まうしやう勇士ゆうしあるひ士卒しそつ——あるひきずつきほねかは散々ちり/″\に、かげとゞめぬさへあるなかをつと天晴あつぱれ功名こうみやうして、たゞわづかひだり微傷かすりきずけたばかりといたとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どちら向いても野の中に唯一人取残されて、昨日きのふ迄の仲間が今日は散々ちり/″\になつて行く後影うしろかげを見送るでもなく、磨いたように光る線路を熟々つく/″\と眺めれば線路は遠く/\走つて何処いづくともなく消えて行く。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
殘し置其中金二百兩は下女下男五人へ旦那の紀念かたみなれば何迄いつまでも御恩を忘れず御回向ごゑかう申せと云ひ聞せて配分はいぶんしければ皆々なみだながらに押戴おしいたゞ散々ちり/″\にこそ出行けれ夫より先に忠八は喜内の死骸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)