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敏
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さとし
今ぞ
廿日の
月面かげ
霞んで、さし
昇る
庭に
木立おぼろおぼろと
暗く、
似たりや
孤徽殿の
細殿口、
敏が
爲には
若くものもなき
時ぞかし。
夫れと
知らねば
車は
其まヽ
玄關にいそぐを、
敏何ものとも
知らず
遽しく
拾ひて、
懷中におし
入れしまヽ
跡も
見ずに
歸りぬ。
子心にも
義理に
引かれてか
中に
立ちて
胡亂胡亂するを、
敏いろ/\に
頼みて
此度は
封じ
文に、あらん
限りの
言葉を
如何に
書きけん、
文章の
艶麗は
評判の
男なりしが。