掻掴かいつか)” の例文
といいながら突込つッこむように煙管きせるれた、仕事にかか身構みがまえで、かしらは素知らぬ顔をしてうそぶきながら、揃えて下駄を掻掴かいつかめり。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまち起上りし直行は彼の衿上えりがみ掻掴かいつかみて、力まかせに外方とのかた突遣つきやり、手早く雨戸を引かんとせしに、きしみて動かざるひまに又駈戻かけもどりて、狂女はそのすさましき顔を戸口にあらはせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
抱くばかりにしたのだが、余所目よそめには手負ておへるわしに、丹頂たんちょうつる掻掴かいつかまれたとも何ともたとふべき風情ふぜいではなかつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藁草履を蹴立てて飛着いて、多磨太が暗まぎれに掻掴かいつかむ、鉄拳かなこぶしに握らせて、自若として、少しも騒がず
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人長は猿臂えんぴを伸ばして美しき犠牲いけにえの、白きうなじ掻掴かいつかみ、そのおもてをばけざまに神崎の顔に押向けぬ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人長は猿臂えんぴを伸ばして美しき犠牲いけにえの、白きうなじ掻掴かいつかみ、そのおもてをばけざまに神崎の顔に押向けぬ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三吉は左手ゆんでを伸べて白きうなじ掻掴かいつかみ、「ええ、しぶとい、さあ立て、立たねえとこうするぞ。」と高くかざせる右手めてこぶしを、暗中よりしっかとやくして、抑留おさえとめたる健腕あり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
細く白き手をもがきて、その一条を掻掴かいつかみ、アと云いさま投げ棄てつ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言下に、床板を跳ね、その穴より黒潮騎士こくちょうきし大錨おおいかりをかついであらわる。騎士二三、続いて飛出づ。美女を引立て、一の騎士がさかしまに押立てたる錨にいましむ。錨の刃越はごしに、黒髪の乱るるを掻掴かいつかんで、押仰向おしあおむかす。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あッと腰を抜いて、手をくと、その黒髪を掻掴かいつかんだ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)