押戴おしいただ)” の例文
たけより高い茅萱ちがやくぐって、肩で掻分かきわけ、つむりけつつ、見えない人に、物言いけるすべもないので、高坂は御経おきょうを取って押戴おしいただ
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
澄夫はうやうやしく大盃を押戴おしいただいたが、伝六郎が在合ありあ熱燗あつかんを丸三本分逆様さかさまにしたので、飲み悩んだらしく下に置いて口を拭いた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「三之丞、この弓を申付ける」「はっ、さようなれば、恐れながら弓を持参仕りまする」「許す、余の弓をもって射よ」弓を渡されたので、押戴おしいただいて受取り、矢を取って立上った。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「唯今、本国から重大なる報告があったからして、一同に伝える」艦長は無線電信をしるした紙片をうやうやしく押戴おしいただいて、「大元帥陛下には、只今、×国に対して宣戦の詔勅しょうちょくを下し給うた」
太平洋雷撃戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
殆ど女の方を振り向いて見無かったが、女の言葉が終ると黙ってうなずいて手鞄を開け、金貨や紙幣を交ぜて女に渡した。女は指に白手袋の吸い付いて居るイベットの手を押戴おしいただく様に喜んだ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「や、や、や、貴女あなた、貴女じゃった、貴女。」と袖を開き、胸をいて、すがりもつかんず、しかも押戴おしいただかんず風情である。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大将の婆さんが涙を流して『ようしなさった。感心感心』と二人の手を押戴おしいただいて見せるので、塾の連中が皆、金鵄きんし勲章でも貰うたように俺達の手柄を羨ましがったものじゃったぞ。ハハハハハ
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
巫女 (きざはしくだる。髪は姥子おばこに、鼠小紋ねずみこもん紋着もんつき、胸に手箱を掛けたり。馳せでつつ、その落ちたる梭を取って押戴おしいただき、社頭に恭礼し、けいひつを掛く)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穂坂は一度取って量を知った、両手にすっと軽く、しかしうやうやしく、また押戴おしいただいて据直すえなおした。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と祈念なし、机を取って、押戴おしいただいて、きっと見て、其方そなたへ、と座を立とうとする。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海野はことさらに感謝状を押戴おしいただき、書面を見る事久しかりしが、やがてさらさらと繰広げて、両手に高く差翳さしかざしつ。声を殺し、なりを静め、片唾かたずを飲みてむらがりたる、多数の軍夫に掲げ示して
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海野はことさらに感謝状を押戴おしいただき、書面を見る事久しかりしが、やがてさらさらと繰広げて、両手に高く差翳さしかざしつ。声を殺し、なりを静め、片唾かたずを飲みてむらがりたる、多数の軍夫に掲げ示して
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、一度押戴おしいただくがごとくにして、ハタと両手をついた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)