懐中くわいちう)” の例文
旧字:懷中
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
代助の懐中くわいちうは甚だ手薄てうすになつた。代助は此前ちゝつた時以後、もううちからは補助を受けられないものと覚悟をめてゐた。今更平気なかほをして、のそ/\出掛でかけて行く了見は丸でなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
始のほどは高利かうりの金を貸し付けて暴利ぼうりむさぼり、作事こしらへごとかまへて他をおとしいれ、出ては訴訟沙汰そしようさたツては俗事談判ぞくじだんはんゆる間も無き中に立ツて、ぐわんとして、たゞ其の懐中くわいちうこやすことのみ汲々きふ/\としてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あなたの懐中くわいちうにある小さな詩集を見せてください
春の詩集 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
其上そのうへ午餐を断つて、旅行するにしても、もう自分の懐中くわいちうあてにするわけにはかなかつた。矢張り、兄とかあによめとか、もしくはちゝとか、いづれ反対派のだれかをいためなければ、身動みうごきれない位地にゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)