感泣かんきゅう)” の例文
大原「ウムありがとう。ありがたい事は実にありがたくって僕も昨日きのうから君らの恩に感泣かんきゅうしているがね、少々ここに困った事があるテ」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「成政こと、切腹をも、お申しつけられるべきのところ、御寛大なお沙汰をうけ、感泣かんきゅうしておりまする。過去は水にながして、何とぞ以後も」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はっ。心得まして厶ります。御諚ごじょう伝えましたらいずれも感泣かんきゅう致しますることで厶りましょう。取替えまする間、おろうそくを持ちまするで厶ります」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
これをかゆとしまた鰹節かつぶし煮出にだしてもちうれば大に裨益ひえきあればとて、即時そくじしもべせておくられたるなど、余は感泣かんきゅうくことあたわず、涕涙ているいしばしばうるおしたり。
「全く御前の御蔭おかげだよ。大いに感泣かんきゅうしているさ。感泣はしているようなものの忘れちまったんだから仕方がない」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日も「地下に感泣かんきゅうす」だの、または「地下の霊もし知るあらば」だのと、平気でいう人もぽつぽつある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その情義のあつき志を知りては、妾も如何いか感泣かんきゅうの涙を禁じ得べき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
感泣かんきゅうをしているのかも知れない。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕はもとより最初からその従妹いとこと婚礼する心はない。ことにお登和さんの事が極まって中川君同胞きょうだいが僕のためにそれほどまで尽力せられると聞いては僕も感泣かんきゅうしてその恩にむくゆるつもりだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
またせめては先生の生前せいぜんにおいて、予がいかにこの感泣かんきゅうすべきこの感謝かんしゃすべき熱心ねっしんと、いかにこの欣戴きんたいかざる衷情ちゅうじょうとをつぶさにいもいでずして今日に至りたるは、先生これをなんとか思われんなどと
「かれが聞きましたなら、さだめし、ごおん感泣かんきゅういたしましょう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)