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御新姐樣
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ごしんぞさま
御新姐樣が
目の
前へお
立ち
遊ばしたやうに
見えましたものでござりますから、
豫て
胸充滿の
申譯をうか/\
喋舌つたでござります。
「
否、お
恥かしい、お
目を
掛けるやうなのではござりません、それに
夜店で
買ひましたので、
御新姐樣、お
手に
觸れましては
汚うござります。」
(
友さん。)と
今おつしやつて
下さいました、
其の
御聲が、
御新姐樣そつくりで、——
友造は
胸が
充滿に
成りました。
迚も
御利生のない
處を、
御新姐樣のお
執成で、
些と
纏まつた
草鞋錢を
頂戴する、と
其の
足で
新地入りでござります。
何とも
恐多い
事ではござりますが、
御新姐樣に
一つお
願があつて
罷出ましてござります、へい。
御新姐樣、
此の
上の
御無理は、
助けると
思召しまして、
其のお
歌を
一寸お
認め
下さいまし、お
使の
口上と
違ひまして、つい
馴れませぬ
事は
下根のものに
忘れがちにござります