後退あとじさり)” の例文
少年達はギクンとして、其処は山門からかなり間隔も離れてゐたのだが、彼等の身体を擦り合はすやうに密集させ、ヂリヂリと後退あとじさりした。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
相手の言葉付は、一眸いちぼううちに変っていた。ひょうが、一太刀受けて、後退あとじさりしながら、低くうなっているような無気味な調子だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
杖をこみち突立つきたて/\、辿々たどたどしく下闇したやみうごめいてりて、城のかたへ去るかと思へば、のろく後退あとじさりをしながら、茶店ちゃみせに向つて、ほっと、立直たちなおつて一息ひといきく。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
噫〻心たかぶる基督教徒クリステイアンよ、さちなき弱れる人々よ、汝等精神たましひの視力衰へ、後退あとじさりして進むとなす 一二一—一二三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と三人は後退あとじさりをした。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二足ふたあし三足みあし後退あとじさりして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
杖をこみちに突立て突立て、辿々たどたどしく下闇したやみうごめいて下りて、城のかたへ去るかと思えば、のろく後退あとじさりをしながら、茶店に向って、ほっと、立直って一息く。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
豹だ、一太刀受けて、後退あとじさりしながら、低くうなつてゐるやうな無気味な調子だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「ああ、かたじけのうござります。何たる、神様か、仏様か、おかげで清く死なれまする。はいはい、わたくし風情にここと申す住所すみかもござりませぬ。もう御暇おいとまを下されまし。」と揉手もみでをしつつ後退あとじさり
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思わず顔をあからめながら、もじもじ後退あとじさりになり、腰をかけて待合している、患者か、はた供のものか、円髷まるまげ婦人おんなの次なる椅子に堅くなったが、心こそ着かざりけれ、外科室に寄った椅子の上に
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手持不沙汰てもちぶさたに、後退あとじさりにヒョイと立って、ぼんやりとしてふすまがくれ
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)