トップ
>
彼方此方
>
あなたこなた
ふりがな文庫
“
彼方此方
(
あなたこなた
)” の例文
「なにせい、この地方に来られたに違いない」と、捜査の手分けを命じ、自身もただ一騎馳け、
彼方此方
(
あなたこなた
)
と、
血眼
(
ちまなこ
)
で尋ねあるいていた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
冬枯の庭園の輝く日さへ一としほ
荒寥
(
くわうれう
)
を添ふるが中を、
彼方此方
(
あなたこなた
)
と歩を移すは、山木の梅子と異母弟の剛一なり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
一樣に眞黒な服裝の男子は隨意に
彼方此方
(
あなたこなた
)
に直立して、何れも純化された技巧的の中音で
徐
(
おもむろ
)
に雜談して居る。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
やがて
彼方此方
(
あなたこなた
)
の陣屋から炊事の煙りが立ち昇り、馬の
嘶
(
いなな
)
き犬の吠え声または
撃柝
(
げきたく
)
の凛々しい音が、ひとしきり賑かに聞こえたが、それも次第に静まり返り
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もし島田虎之助という人が
彼方此方
(
あなたこなた
)
の試合の場を踏む人であったなら、机竜之助の剣術ぶりも見たり或いはその評判を聞いたりして、
疾
(
と
)
くにさる者ありと感づいたであろうが
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
芸妓
(
げいぎ
)
はお
世辞
(
せじ
)
を
売品
(
ばいひん
)
とし、
彼方此方
(
あなたこなた
)
に振りまき、
柔
(
やさ
)
しいことをいうて、その
報酬
(
ほうしゅう
)
にポチを
貰
(
もら
)
おうとするが、彼らは
明
(
あから
)
さまにこれをその職業に表していることゆえ、さらに驚くに足りません。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
やや有りて彼は
徐
(
しづか
)
に立ち上りけるが、こ
回
(
たび
)
は更に
邇
(
ちか
)
きを眺めんとて双眼鏡を取り直してけり。
彼方此方
(
あなたこなた
)
に差向くる筒の
当所
(
あてど
)
も無かりければ、
偶
(
たまた
)
ま
唐楪葉
(
からゆづりは
)
のいと近きが
鏡面
(
レンズ
)
に
入
(
い
)
り
来
(
き
)
て一面に
蔓
(
はびこ
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
美智子と宗三との声が遠くから、
彼方此方
(
あなたこなた
)
に動きながら聞えて来る。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
呟
(
つぶや
)
きながら、秀吉は
床几
(
しょうぎ
)
から立った。そして幕舎の外へ出ると、
彼方此方
(
あなたこなた
)
に、空の屋根と草のしとねを楽しんでいる武者たちの群が見られた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
物売りの声裏悲しく、
彼方此方
(
あなたこなた
)
に人の雨戸を繰る音が聞えて
夜
(
よる
)
が来ると、ああ日本の夜の暗い事はとても言葉にはいい
尽
(
つく
)
せません。死よりも墓よりも暗く冷く、
淋
(
さび
)
しい。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それも至って、落着き払った顔して、雑草の
生
(
お
)
い茂っている広い空地を、
彼方此方
(
あなたこなた
)
、見まわしながら歩いて来たのである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼方此方
(
あなたこなた
)
、踏みやぶる戸障子の物音をも
衝
(
つ
)
きぬいて、女たちの泣きさけぶ声、呼び
交
(
か
)
う悲鳴が、一層、ここの揺れる
甍
(
いらか
)
の下を
凄愴
(
せいそう
)
なものにしていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすがに、吉岡門下の一かたまりが見える附近へは立ち入って来ないが、乳牛院の原の
彼方此方
(
あなたこなた
)
には、
萱
(
かや
)
のあいだや樹の枝にまで、人の頭が、無数に見えた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兎でも追っていたか、
彼方此方
(
あなたこなた
)
を、自然の児となって、縦横に跳びまわっていた騎馬の小姓衆は、どこかで
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
語りながら、なお船楼の
幕
(
とばり
)
のうちで、酒を酌み、また
碇
(
いかり
)
を移し、
彼方此方
(
あなたこなた
)
、夜明けまではと、探っていた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頷いて、そこに、しゃがみ込んだのは
先生
(
せんじょう
)
金右衛門です。彼が死骸のふところをしきりと探っている間に、日本左衛門は
彼方此方
(
あなたこなた
)
を、涼しい顔で歩いていました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それほど家中の者すべてが何へも手がつかない心地で、ただ
彼方此方
(
あなたこなた
)
に
立評議
(
たちひょうぎ
)
をつづけていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眼は
吊
(
つ
)
り上がってしまっている。足もつかずに廊下の
彼方此方
(
あなたこなた
)
を、無我夢中で探し廻った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふいて、
彼方此方
(
あなたこなた
)
と、庭木の多い屋敷を歩いて居れば、きっと鷹が聞きつけて降りて来る
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方此”で始まる語句
彼方此處