年老としお)” の例文
この木の上には、年老としおいたブナの木々の枝がおおいかぶさっているので、その上に出れば、すぐにげだすこともできるでしょう。
又は年老としおいてタヨリになるを持ち得ない物淋しさ、情なさ、自烈度じれったさを、たまらない嫉妬心と一緒に飽く事なく新しい犠牲……若い、美しい一知に吹っかけて
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ふるびついたる戟共ほこどもおなじく年老としおいたる手々てんでり、汝等なんぢらこゝろびつきし意趣いしゅ中裁ちゅうさいちからつひやす。
寄りたかっていた群集の中から、年老としおいたとびの者らしい顔が出て来ると、感にえたように言った。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
年老としおった両親を東京へひきとったが、眼のうすい父親も、耳の遠くなった母親も、半年もたぬうちに田舎の土を恋しがりはじめ、それでもせがれのKに怒りつけられれば悄々しおしお
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
ややもすれば年老としおいて女の役の無くなるころのぞむと奇妙きみょうにも心状こころ焦躁じれたり苛酷いらひどくなったりしたがるものであるから、この女もまたそれの時に臨んでいたせいででもあろうか
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あかトラ」のはなしつよこころかれたのも、このジャックという年老としおいた不幸ふこう野犬やけんのことが、たえずあたまなかにあったからでした。叔父おじは、どういうものかジャックをこころからにくんでいるのでした。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
年老としおいた両親の手から引取られて轟の世話になって来ておりますので、それから今年までの二十年間、轟は独身のまま私を育てるために色々と苦労をしておりますが
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
年老としおいた母親が可哀相なばっかりに……もう死ぬるかも知れないお母さんが……タッタ一眼会いたがっている老母がる……居りますばっかりに……自……自傷しました……
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)