たす)” の例文
或日五百は使をって貞白を招いた。貞白はおそるおそる日野屋のしきいまたいだ。兄の非行をたすけているので、妹にめられはせぬかとおそれたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
遊女などに酒興をたすけさしていたのを、やがてその踊子を用ゆるに至った、それがつまり女芸者の起りだ。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
おつぎはたゞ勘次かんじ仕事しごとたすけてた。しかあひだにも念佛寮ねんぶつれうはこばれた卯平うへいわすれてはなかつた。おつぎは火事くわじつぎ勘次かんじへはだまつて念佛寮ねんぶつれうのぞいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
如何なる賤陋せんろうのものにも、世おのづからこれと相従ひあひたすけて功を共にし楽を分つものあるを云ひ、彼は、先づ自ら楽みて笑ひ、又能く笑ひて人を楽ましむるものは
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それよりもこの辺一帯は国家の経済をたすける工業地になってこの堤上は自動車や貨物自動車の往来が頻繁を極むる枢要な道路になりたいと、今日この堤の桜を云々する人達は時世に鑑み
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
諸王をして権を得せしむるも、また大なりというべし。太祖の意におもえらく、かくごとくなれば、本支ほんしあいたすけて、朱氏しゅし永くさかえ、威権しもに移る無く、傾覆のうれいも生ずるに地無からんと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勿論利休をたすけて当時の趣味の世界を進歩させた諸星の働きも有つたには相違ないが、一代の宗匠として利休は恐ろしき威力を有して、諸星を引率し、世間をして追随させたのである。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
勿論利休をたすけて当時の趣味の世界を進歩させた諸星の働きもあったには相違ないが、一代の宗匠として利休は恐ろしき威力を有して、諸星を引率し、世間をして追随させたのである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
道衍どうえんの一生を考うるに、えんたすけてさんを成さしめし所以ゆえんのもの、栄名厚利のためにあらざるがごとし。しか名利めいりの為にせずんば、何をくるしんでか、紅血を民人に流さしめて、白帽を藩王にいただかしめしぞ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)