ざし)” の例文
と云われ源次郎は忍び姿の事なれば、大小を落しざしにして居りましたが、此の様子にハッと驚き、拇指おやゆびにて鯉口を切り、ふるえ声を振立ふりたって
お綱が帯にかくざしにした柳しぼりの一腰さえ、尺八の袋か、笛や舞扇でも入れているかと、人目もひかぬほど調和していた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四月十日ごろには、寛斎は朝早くしたくをはじめ、旅のおとざしに身を堅めて、七か月のわびしい旅籠屋住居はたごやずまいに別れて行こうとする人であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
してやらんとしり引縛ひつから強刀物だんびらものを落しざしになし頬冠ほゝかぶり深く顏をかく利根川堤とねがはづつみさしいそぎけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それで一匁とか一尺とかいう言葉が通用して、1.0023でも1.0012でも一尺ざしである。天気がどんなでも一尺差はやはり一尺差であって、呉服商が一々寒暖計と相談する必要がない。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
旅のおとざしを床の間に預ける安兵衛もいる。部屋へやの片すみに脚絆きゃはんひもを解く嘉吉もいる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
聞直八それ高價たかいわしは百姓のことだから身にはすこしかまひは無い見てくれさへよければいゝほんの御祝儀しうぎざしもうちつと負て下さい道具屋否々いへ/\此品はかた代物しろものなれば夫よりは少しもひけやせんと是より暫時しばし直段ねだん押引おしひき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)