巌山いわやま)” の例文
旧字:巖山
なかで一ばんおおきな彼方むこう巌山いわやますそに、ひとつの洞窟ほらあならしいものがあり、これにあたらしい注連縄しめなわりめぐらしてあるのでした。
が、巌山いわやま巉崕ざんがいを切って通した、栄螺さざえつのに似たぎざぎざのふもとこみちと、浪打際との間に、築繞つきめぐらした石のしがらみは、土手というよりもただ低い欄干に過ぎない。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしいそいでいわからりてそこへってると、あんたがわず巌山いわやまそこに八じょうじきほどの洞窟どうくつ天然てんねん自然しぜん出来できり、そして其所そこには御神体ごしんたいをはじめ
家並を二町ほど離れて来ると、前に十一二間幅の川が、一天地押包んだ巌山いわやまの懐から海へそそいでいる。……
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……鬱陶うっとうしい目金も、マスクも、やっと取って、はばかりの中ですよ。——それでほっとして、おおき階子段はしごだんの暗いのも、巌山いわやまながめるように珍らしく、手水鉢ちょうずばちかけひのかかった景色なぞ……
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じいさんはいとも気軽きがるにスーッと巌山いわやまをめぐって姿すがたしてしまいました。