山駕籠やまかご)” の例文
あれも現代におけるステッキの概念にはあてはまらないもので、昔の交通機関としての山駕籠やまかごという機械の部分品と考えるべきものであろう。
ステッキ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ふと、軒に乾した煙草の葉と、蕃椒とうがらしの間に、山駕籠やまかごすすけたのが一挺かかった藁家を見て、朽縁くちえんどうと掛けた。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
停車場ステーションからダンリーという山駕籠やまかごに乗って直にサラット師の別荘〔ラハサ・ビラ〕に参りましたが、大変立派な別荘で私はそこへ泊り込むことになりました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「やっと山駕籠やまかごを一挺探して来たよ、駕籠はいくらもあるにはあるんだが、人手が無いんだ、おどしつ、すかしつするようにして、ようやく一挺仕立てて来た」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
付其外帳面ちやうめん書留かきとめるに米千八百五俵むぎ五百三十俵並に箪笥たんす長持ながもちさを村役人立合たちあひにて改め相濟あひすみ其夜寅半刻なゝつはんどき事濟に相成山駕籠やまかごちやうを申付て是へ文藏夫婦に下男吉平を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで、湯本泊りならば格別、更に山の上へ登ろうとすれば、人力車か山駕籠やまかごに乗るのほかはない。
温泉雑記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
年とったあによめだけは山駕籠やまかご、その他のものは皆徒歩で、それから一里ばかりある静かな山路やまみちを登った。路傍に咲く山つつじでも、すみれでも、都会育ちの末子を楽しませた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
途中、一里半ばかりの六花台までは自動車、それから一里ばかりの万相渓までは山駕籠やまかごであった。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ふもとまでは、三造にも初めての山駕籠やまかごであった。あまり強そうにも見えない三十前後の男が前後に一人ずつ、杖をもって時々肩を換えながら、石段路を歩きにくそうに下って行った。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その翌朝、山駕籠やまかごに身を揺られて行く机竜之助。庵原いおはらから出て少し左へ廻りかげんに山をわけて行く。駕籠わきにはがんりきが附添うて、少しおくれてお絹の駕籠。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから熱海へ来て大湯おおゆの前の宿屋で四、五日滞在した後に、山駕籠やまかごを連ねて三島みしまへ越えた。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
硝子ガラス張りの旅館一二軒を、わざと避けて、軒に山駕籠やまかご干菜ひばるし、土間のかまどで、割木わりぎの火をく、わびしそうな旅籠屋をからすのようにのぞき込み、黒き外套がいとうで、御免と、入ると
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見上げるところの九十九折つづらおりの山路からおもむろに下りて来るのは、桐油とうゆを張った山駕籠やまかごの一挺で、前に手ぶらの提灯を提げて蛇の目をさしたのは、若い女の姿であります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やがて出来上ったお雪ちゃんのよそおいは、結綿ゆいわたの島田に、紫縮緬の曙染あけぼのぞめの大振袖という、目もさめるばかりの豪華版でありました。この姿で山駕籠やまかごに揺られて行くと、山駕籠が宝恵駕籠ほえかごに見えます。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それが真中に急仕立ての一梃の山駕籠やまかごを取囲んでいる。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)