小机こづくゑ)” の例文
なかには主人あるじ宗匠そうしやう万年青おもとはちならべた縁先えんさき小机こづくゑしきり天地人てんちじんの順序をつける俳諧はいかいせんいそがしいところであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
平次はもう一度主人に逢つて、何やらたしかめました。いや、何やらと言ふよりは、主人の床の前に据ゑた、小机こづくゑの上を、妙な調子で叩いて聽かせると
小机こづくゑに、茫乎ぼんやり頬杖ほゝづゑいて、待人まちびとあてもなし、ことござなく、と煙草たばこをふかりとかすと
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
餘りの事に左右とかうの考も出でず、夢幻ゆめまぼろしの思ひして身を小机こづくゑに打ち伏せば、『可惜あたら武士ものゝふに世を捨てさせし』と怨むが如く、嘲けるが如き聲、何處いづこよりともなく我が耳にひゞきて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ちやがなかつたら、うちつてつてな。鐵瓶てつびんをおかけ。」と小造こづくり瀬戸火鉢せとひばち引寄ひきよせて、ぐい、と小机こづくゑむかひなすつた。それでも、せんべい布團ぶとんよりは、居心ゐごころがよかつたらしい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
稽古本けいこぼんを広げたきり小机こづくゑを中にして此方こなたには三十前後の商人らしい男が中音ちゆうおんで、「そりやなにはしやんす、今さら兄よ妹とふにはれぬ恋中こひなかは………。」と「小稲半兵衛こいなはんべゑ」の道行みちゆきを語る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小机こづくゑに墨る音や夜半よはの冬
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)