容態ようたい)” の例文
それもその筈です。この物語を聞いた日から三日のちにY——の容態ようたいは急変して遂に白玉楼中はくぎょくろうちゅうの人となってしまったのでした。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
いいつけると、床几しょうぎを求め、彼は強いて、悠然ゆうぜんたる容態ようたいたもとうとした。自分の顔いろをうかがう衆臣の心理はいま微妙にうごきつつあるからだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちにも、病人びやうにん容態ようたいは、刻々こく/\險惡けんあくになつてゆくので、たうとう、そこからあまとほくない、府下ふか××むらのH病院びやうゐん入院にふゐんさせるより仕方しかたがなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
春子は、ガラスの目盛をすかして見たりしながら、よく次郎に母の容態ようたいをたずねた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ただもう黒川団長の容態ようたいばかりを気にしていて、二人がだれであるか、気がつかなかった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも、あなたの嘲蔑ちょうべつとあのけんまくにも屈せず、誠心誠意、相手を説破せんとするあの情熱は正直者です。あの容態ようたいは大器です。必ず後に大きくなるうつわと、野衲やのうは信じて疑いません
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「羽柴どのの家風というか、ここへ来ると、家中の誰もが、まことに気軽で、容態ようたいぶらずに、世辞せじぶらず、至ってみな明るい感じがする。——一家中というものは、こうありたいものだが、さてなかなかこう参らんものでな」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)