)” の例文
やいやい、いくらてめえの物だって礼もいわずに、引ッくるという奴があるか。もいちど、今の巾着を出せ。改めて三べん廻ってお辞儀を
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからあの貴重な小さい靴だが、神も照覧あれ! たとい自分の生命を救うためだと云っても、私はそれを無理に引っくるようなことはしないね。
お光さんは、腰をおろすとすぐに、それを彼の手の下からむしるようにくって、四、五枚、ペラペラと見てはくり返して
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドカアンと弾音はたかくッぽへ走った。つつは美少年の手にくられているのだった。船客たちは、耳を抑えてつ伏した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まるで、滅心したかのように、どすぐろい憤怒と、苦悶に、ぶるぶるとそれを睨んでいた理平は、いきなり彼女の手の物を引ッくッて
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しめたッ——」と三位卿、翡翠かわせみうおをさらったように、それをつかんで飛び立ったが、とたんに、目をつけた万吉が、横合から引っくって
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあいだに、二度三度、こう求めて、誰やらがひざまずいて、眼の前に捧げる弓を、引っくるようにつかむや否
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近習のささげる青貝柄あおがいえ長刀なぎなたを、くるように小脇にかかえ、ばらばらっと表方へ跫音を踏み鳴らしてゆくと
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐ彼の手から主人典厩の首を引っくるやいな、顔中を涙にぬらして、武田方の陣地へと駈けこんで行った。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いきなり男のついている竹の杖をひッくった。そして短刀の抜く手も見せず、杖を二つにぱんと割った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵の手から引っくると、そのつまらない百姓鍛冶屋の女房がひたと鎖鎌を持って、体の仕型しかたを見せた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、浜田なにがしは、打って来る相手の天秤を引っくり、それへ叩き伏せてしまうと、西瓜売りの背中へ天秤を背負わせ、有合う縄で、棒縛りに、ぎりぎり巻きつけた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍の千段を持って引っ張っていた薩兵は、勢いよく後ろへ引っくりかえった。露八は、離した槍へまた飛びついて、くるとすぐ、相手の者がち上がるところを
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人の持っていたさおを引っくって、蓑笠みのかさを着けた男がすばやく彼の前へ小舟の先を着けて来る。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数右衛門は、相手の槍を引ッくった。そして、庄左衛門の体を振り飛ばすように振ッて
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう彼の手には、次にかかって来た賊の手から引っくった刀があった。それで一人を浴びせ、一人を突くと、蜂の子の出るように、土匪はわれがちに土間の外へ跳び出した。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、そう叱咤すると、臣下の得物を引っくって、獅子のように廻廊を走った。彼方のおばしまに手をかけて、登ろうとした敵の一武者を見、その真っ向へ一撃を下したのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刺叉を引っくられた男が、真っ先にその得物の先で髪を引っかけられた。四、五人叩き伏せておいて、虚空へさっとひらめかしたのは彼の腰に横たえていた胴田貫どうたぬきらしい大太刀である。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血が焦々いらいらして、それをくって、二つに折ってやりたいほどな心に駆られた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高氏は、彼女がそこへさし置いた目録の奉書を、すぐ引ッくって、破り捨てた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引っくって、こんどは他の者がねらう。それは、谷の途中で沈んでしまった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半之丞とよばれた随行の武士は、久助の手から印籠を引ッくって
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女の金時計やマフラを、ひつくツて、こんな物が何だと、乘客たちの前も忘れて、叩きつけるのを、女が、拾はうとすると、そんなに虚榮心が捨てられないのかと云つて、横顏を、平手でなぐつた。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
お袖は、ことばの下に、お燕の腰から、印籠をむしくった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いいかけるのをくって、小次郎は早口に
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主殿はやにわに、机の上の書物をひッくッて
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うなずいて、小次郎の手から、それをくった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、竹竿をくった。
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)