天神様てんじんさま)” の例文
初卯はつう母様おつかさん腰元こしもとを二人れて、まち卯辰うたつはう天神様てんじんさまへおまゐンなすつて、晩方ばんがたかへつてらつしやつた、ちやうど川向かはむかふの、いまさるところ
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
古代の人のような帽子ぼうし——というよりはかんむりぎ、天神様てんじんさまのような服を着換えさせる間にも、いかにも不機嫌ふきげんのように、真面目まじめではあるが、いさみの無い、しずんだ
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一直線の堀割ほりわりはこゝも同じやうに引汐ひきしほきたな水底みなそこを見せてゐたが、遠くのはたけはうから吹いて来る風はいかにもさわやかで、天神様てんじんさま鳥居とりゐが見えるむかうのつゝみの上にはやなぎ若芽わかめが美しくひらめいてゐるし
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
僕等は「橋本はしもと」の前で円タクをおり、水のどす黒い掘割り伝ひに亀井戸かめゐど天神様てんじんさまへ行つて見ることにした。名高い柳島やなぎしまの「橋本」も今は食堂に変つてゐる。もつともこの家は焼けずにすんだらしい。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天神様てんじんさまの細道じゃ/\
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
僕等は門並かどなみの待合まちあひあひだをやつと「天神様てんじんさま」の裏門へ辿たどりついた。するとその門の中には夏外套を着た男が一人ひとり、何か滔々としやべりながら、「お立ち合ひ」の人々へ小さい法律書を売りつけてゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)