-
トップ
>
-
てんじんさま
一直線の
堀割はこゝも同じやうに
引汐の
汚い
水底を見せてゐたが、遠くの
畠の
方から吹いて来る風はいかにも
爽かで、
天神様の
鳥居が見える
向うの
堤の上には
柳の
若芽が美しく
閃いてゐるし
僕等は「
橋本」の前で円タクをおり、水のどす黒い掘割り伝ひに
亀井戸の
天神様へ行つて見ることにした。名高い
柳島の「橋本」も今は食堂に変つてゐる。
尤もこの家は焼けずにすんだらしい。
着たる奴はお前も知ての
那の
藪醫者長庵
坊主に
相違無し
斯うばかりでは
譯らぬが
算へて見れば八年
跡八月廿八日に
寅刻起して三日ゆゑ
例の通り平川の
天神樣へ參詣に
出掛た處か
早過て
往來の人はなし
雨は
頻りに
強く
降困つたなれど
信心參り少しも
厭はず參詣なし
裏門を