場所ところ)” の例文
場所ところ山下やました雁鍋がんなべの少し先に、まが横丁よこちやうがありまする。へん明治めいぢ初年はじめまでのこつてつた、大仏餅だいぶつもち餅屋もちやがありました。
二人は側縁そばえんの下まで行つて見えなくなつた。社前の廣庭へ出たのである。——自分も位置を變へた。廣庭の見渡される場所ところへ。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひょっとしたら鼻はちゃんとあるべき場所ところについているのかも知れないと思いながら、まず眼を細くして恐る恐るのぞいてみたが、その殺那せつな
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
場所ところも淋しい星ヶ岡、光も凍る午前四時、片側は土手、片側は松と杉の植込みに、根には小笹のサラサラと、足に障りていと狭き、真暗がりの胸突坂。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
画家 (かすかに眉をひそむ。しかし寛容に)保養に来る場所ところですから、そんな悪戯いたずらもいいでしょうな——失礼します。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正太が一つ場所ところに一週間居ると、きっともうそこには何か持上っている——正太はお俊にまで掛った——こんなことまで豊世はお雪に話して行ったとかで。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と云うのは、或る一つの洒落しゃれれた○○な形が、場所ところもあろうに、皺の波の中に描かれてしまうからであった。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あたしの写真をね、どうしてそんな場所ところへもってらっしゃったのか、芸妓げいしゃが拾ってね、あてつけだって怒ったの。お嬢さんへって宛名あてなで、随分しどいこと書いてよこしたのですって。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「お前なんかの口を出す場所ところぢやねえ、引込んでゐるがいゝ」
住みゆき場所ところ何方ぞ
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
二人は側縁そばえんの下まで行つて見えなくなつた。社前の広庭へ出たのである。——自分も位置を変へた。広庭の見渡される場所ところへ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして親指で、前に鼻のあった場所ところをぽんと叩いたので、少佐は思わず首を後へ引いたが、勢いあまって、壁に後頭部をぶっつけてしまった。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
全く現今いまでは想像のつかないほど、横濱の南京町ナンキンまちなど不氣味な場所ところだつたやうだ。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
が——どうやら、まんざら初めての場所ところでもなささうだ。片方には森があり、森の蔭から何か竿のやうなものが突き出て、ずつと空高く聳えてゐる。
父は私を友達のように、とんでもない場所ところへまで連れてゆく。薬研堀やげんぼりのおめかけさんのところへ連れていったまま、自分は用達ようたしに出てしまうので、私は二、三日して送りかえされる。
一同みんな今迄の場所ところに今迄の通り列べ。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
例の呪禁まじなひのかかつたところを通りかかると、つい歯の間から⦅忌々しい場所ところだ!⦆と呟やかずにはゐられなかつた。
せん場所ところへ列ぶのだ、先の場所へ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところで、くだんの、踊りの出来なかつた場所ところには垣根を𢌞らして、そこへは何でも不用の物や、瓜畑から掻き出した雑草や芥屑ごみくづなどを捨てさせたもので。
一同みんな今迄の場所ところに今迄の通り列べ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ずっと以前、私がまだいとけなかった頃のことで、もはや返らぬ夢と過ぎ去った少年の日のころ私は見も知らぬ場所ところへ初めてやって行くのがとても嬉しかったものだ。
『噫、君、僕はどうも樣々思出されるよ。……だが、何だらうね、僕の居たのは田舍だツたから多少我儘も通せたやうなものの、かういふ都會めいた場所ところでは、矢張駄目だらうね。僕の一睨みですくんで了ふやうな校長も居まいからね。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
——『あなたのお心がさまよっている、その幸福な場所ところは一体どこなのでございましょうか?』——
『噫、君、僕はどうも様々思出されるよ。……だが、何だらうね、僕の居たのは田舎だツたから多少我儘も通せたやうなものの、かういふ都会めいた場所ところでは、矢張駄目だらうね。僕の一睨みですくんで了ふやうな校長も居まいからね。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うけ売りの思想を吹聴したりする場所ところばかり狙っているのだが——その思想も流行の法則どおり、ほんの一週間ぐらい市を風靡するに過ぎない思想で、それも、邸の中や
眞佐子はいつも場所ところに座つて
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ようやく彼は専ら道中のことに思いを潜めて、ただ右を見たり、左を見たりするだけで、もうN市のことなどは、遠い遠い少年の日にでも通りすぎた場所ところかなんぞのように
真佐子はいつも場所ところに坐つて
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
医者は、なに、大丈夫と言って、もう少し壁からはなれたらいいと注意してから、まず首を右へ曲げさせて、前に鼻のあった場所ところを手でさわって見て、【ふうむ!】と言った。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
時々じつと、長いあひだひとつ場所ところに坐つてゐると、いかにも何もかもが初めから脳裡あたまに浮かびあがつて来さうな気がするのぢや……が、やはりまたぼうつとしてしまふのぢや。