さが)” の例文
あの警報器にぶらさがっているニッケルの握り玉がおれを誘惑するのだ。それは『どうぞ私を引いて下さい』とせがんでいるように見えた。
ピストルの蠱惑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
おほきざうで、めしときなんぞ、ならんですはる、と七才なゝつとしわたくし芥子坊主けしばうずより、づゝとうへに、かみさがつた島田しまだまげえたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつらたるやうにくしけづりたりし彼の髪は棕櫚箒しゆろぼうきの如く乱れて、かんかたかたげたる羽織のひもは、手長猿てながざるの月をとらへんとするかたちして揺曳ぶらぶらさがれり。主は見るよりさもあわてたる顔して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのくせ痛くも何ともないが、手を突張って起上りたくも、両方の腕がだらりとぶらさがっています。
おくれ毛を、掛けたばかりで、櫛もきちんとささっていましたが、背負しょい上げの結び目が、まだなまなまと血のように片端さがって、踏みしめてすそかばった上前の片褄かたづまが、ずるずると地をいている。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
めちゃくちゃに砕けた肉と、骨と、血でどろどろになったものがぶらさがっていたのである。
おどかすように呶鳴りつけると、モッフは黙って、そばに並んでいる腰掛をゆびさした。そこには、天井からぶらさがったカンテラに照されて、十人ほどの荒くれ男が正体もなく転がっていた。