地殻ちかく)” の例文
旧字:地殼
これらの大地震によって表明される地殻ちかくひずみは、地震のない時でも、常にどこかに、なんらかの程度に存在しているのであるから
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
東西三十間、南北二十余間の塀にかこまれている吉良家の邸は、一瞬の間に、地殻ちかくも裂けるような鳴動めいどうと旋風の中に置かれていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これすなわち、わが国が、完全なる防空力を有する地殻ちかく及び防空硬天井ぼうくうこうてんじょうの下に、かくの如く地下千メートルの地層に堅固けんごなる地下街を建設したことによって
諸君、手っ取り早くうならば、岩頸というのは、地殻ちかくから一寸ちょっとくびを出した太い岩石の棒である。その頸がすなわち一つの山である。ええ。一つの山である。ふん。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
脳髄のうずいや、視官しかん言語げんご自覚じかく天才てんさいなどは、ついにはみな土中どちゅうはいってしまって、やがて地殻ちかくとも冷却れいきゃくし、何百万年なんびゃくまんねんながあいだ地球ちきゅうと一しょ意味いみもなく、目的もくてきまわくようになるとなれば
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
戸外そとは、地殻ちかくも割れんばかりのすさまじい大暴風雨あらし
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
実験室における割れ目の問題が地殻ちかくに適用されるとなると、そこには地質学や地震学の方面に多大な応用範囲が見いだされる。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
谷底は地殻ちかくの割れ目みたいな乱岩大石の状をなし、走り流れる奔湍はやせの凄さは、たちまち、夏を忘れさせる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「裁判長はどうも実に偉い。今や地殻ちかくまでが裁判長の神聖な裁断に服するのだ。」
そうしてその増加率は年とともに増すとすれば遠からず地殻ちかくは書物の荷重に堪えかねて破壊し、大地震を起こして復讐ふくしゅうを企てるかもしれない。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
無数の大きな渦とそれにともなう水と地殻ちかく咆哮ほうこうであった。ぐわうッと闇を鳴る異様な音響でもあった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今こそ地殻ちかくののろのろのぼりや風や空気のおかげで、おれたちとかたをならべているが、元来おれたちとはまるで生れ付きがちがうんだ。きさまたちには、まだおれたちの仕事がよくわからないのだ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
伊吹山はあたかもこの関所の番兵のようにそびえているわけである。大垣おおがき米原まいばら間の鉄道線路は、この顕著な「地殻ちかくの割れ目」を縫うて敷かれてある。
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と、友に云われて、不機嫌に坐り直してはいるが、何かもう、噴出すべき力が——やむにやまれないこれだけの人間の意志が——地殻ちかくを破るように熱しきっている空気だった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このように恐ろしい地殻ちかく活動の現象はしかし過去において日本の複雑な景観の美を造り上げる原動力となった大規模の地変のかすかな余韻であることを考えると
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この国の地殻ちかくには、火の脈が燃えている。温泉いでゆのわく所が多い。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロプ・ノールの転位でも事によると地殻ちかく傾動が原因の一部となっているかもしれないと思われる。
ロプ・ノールその他 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この地質地形の複雑さの素因をなした過去の地質時代における地殻ちかくの活動は、現代においてもそのかすかな余響を伝えている。すなわち地震ならびに火山の現象である。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それは同一地域の三角測量や精密水準測量を数年を隔てて繰り返し、その前後の結果を比較することによってわれらの生命を託する地殻ちかくの変動を詳しく探究することである。
地図をながめて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
近着のアメリカ地理学会の雑誌の評論欄にわが国の地球物理学者の仕事を紹介してあるその冒頭に「地殻ちかく変動の測定に関してはいかなる国民も日本人に匹敵するものはない」
地図をながめて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
次に地震の問題に移って、地殻ちかく内部構造に論及するのは今も同じである。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのほんとうの原因的機巧はまだよくわからないが、要するに物理的には全くただ小規模の地震であって、それが小局部にかつ多くは地殻ちかく表層ひょうそうに近く起こるというに過ぎないであろうと判断される。
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今問題のはらみの地形を見ると、この海峡は、五万分の一の地形図を見れば、何人も疑う余地のないほど明瞭めいりょう地殻ちかくの割れ目である。すなわち東西に走る連山が南北に走る断層線で中断されたものである。
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし場合によっては、これが単に河水の浸蝕作用しんしょくさようだけではなくて、もっと第一次的な地殻ちかく変形の週期性によって、たとえ全部決定されずとも、かなり影響された場合がありはしないかと考えられる。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)