喝破かっぱ)” の例文
鬼王丸が喝破かっぱしたので森然しんと一座は静まったが、宙を舞っている盃は尚グルグルと渦巻きながら、人々の頭上を渡っていたが、突然
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天上の楽を説くに対し、〈もろもろの天に生まれ楽しむ者、一切苦しまざるなし、天女汝まさに知るべし、我生死を尽くすを〉と喝破かっぱしたは
喝破かっぱしたことがあるが、これはそのまま鬼貫の句に該当すべきものである。行水の湯をざぶりと月の湖に捨てるの朗然たるにかぬ。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
狐や狸はばけるものであるとか、世の中に種々いろいろある怪物ばけものの詮索をするのをめてず我々人間が一番大きな怪物ばけもの神変しんぺん不思議な能力を持っていると喝破かっぱ
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
玄蕃のために、あたまからがんと喝破かっぱされて、手痛く参ったようにも見えるし、反対に、冷眼一瞥れいがんいちべつ、相手を歯牙しがにもかけていないとも見られるのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この論文と僅少きんしょうの時日の隔たりしか持たぬ小説『クロイツェル・ソナタ』の中で、作者が直截ちょくせつ喝破かっぱしているところによると、人間の欲望は善の目的到達を妨げる障碍であって
「太閣がお目利のたがわれたる関白殿を、政宗が片眼で見損うのは当然である」と、喝破かっぱして、危機を逃れている。だから秀吉だって、政宗を虫けらとは、最初から思っていないだろう。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
歴史とは大人物の伝記のみとカーライルの喝破かっぱした言にいくぶんなりともその理を認むる者は、かの慾望の偉大なる権威とその壮厳なる勝利とを否定し去ることはとうていできぬであろう。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
為政篇は第一章に政治は徳をもってすべきであると言い、次に詩の本質が「思無邪」であると喝破かっぱし、第三に教化が徳と礼とによるべきであって政と刑とによるべきでないことを言っている。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そして彼は、動物に対する感情の相違は畢竟ひっきょう民族の問題であると喝破かっぱした。つまり芬蘭土フィンランド人は見ただけで嘔吐するかも知れない豚の胎児を、西班牙スペイン人は原形のまま丸蒸しにして賞美するのである。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
同志ヤーコヴレフがいみじくも喝破かっぱした言葉だ。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
国手こくしゅ喝破かっぱして
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
喝破かっぱした。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
祥瑞しょうずい、天象のことなどは、みな取るにも足らぬ浮説である。虚説である」と、明確に喝破かっぱ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大眼カッと見開いて甚五衛門は喝破かっぱした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……糞中の穢虫えちゅうも、おぬしの喝破かっぱに眼がさめて、やっと、外の清さを知ってここへ来たのじゃ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一句鋭く喝破かっぱした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
生前の正成が喝破かっぱしたのであった。尊氏の大逆であると。また、自分とはことなる道をあゆむ野望の人間であると。——しかし尊氏は、これが大義にそむくとは思っていない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうそう、よく喝破かっぱした。坊主という職業しょうばいは、まったく、おせッかいな商売にちがいない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……だが、違いない! 西仏に喝破かっぱされたとおり、思えばこの高綱も糞中の穢虫えちゅう、世の中にうごめくうじの中にもがいていたこの身もまた蛆であった。……ああつまらぬ物に、永いあいだごう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰方どなたやら最前——敵は無策なり——と喝破かっぱせられた御一言、それに極まるものと、わたくしめも、同感にござります。ただし、その無策は、無智の無策、無謀の無策とは、まったく違うものです。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)