各〻めいめい)” の例文
各〻めいめいのまえに行儀よくならべた配膳も、思い思いなところへ運び、大きな鍋のかかっている炉を中心にかたまり合っているのだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあさあみんな行くがいい! 膏薬を振りく時が来た! 引き出せ引き出せ薬剤車! ああそうしてモカさん達や、各〻めいめい木口を持つがいい。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
多分そんな事かも知れないという考えもあったので、よけいな心配や臆測を描いていた各〻めいめいが、自分をわらい合って、手をたたいた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大仏次郎氏の兄さんの野尻抱影ほうえい氏も、氏の小学生時代には今の紙芝居風な雨の日の遊戯を各〻めいめいの自由画でやった覚えがあるとのことである。
「ところが、その古くからの荘園も、新田しんでんも、兄上が十三年もお留守のまに、みな三家の叔父が、各〻めいめい、分けてしまいました」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それッ、とまをはねろ!」というと、一人の侍、繋綱もやいを取って舟を引寄せ、あとは各〻めいめい、嵐のように、狭いみよしへ躍り込んだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、彼の動作に気がつくものは誰もなく、お蝶をかごの中へほうりこむや否や、各〻めいめいは高飛びの足ごしらえに急であります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云うことは、誰にもまたすぐ考えられて来るのであったが、そうと口に出す者はなかったし、各〻めいめいも、自分で自分の常識を打ち消して迄、ただ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
チリン、チリン、チリン、と分け前の小判が、こんな中でも燦然さんぜんとした光をもって、各〻めいめいの手のひらへ一枚ずつおどる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今もみんなと相談をしていたんだが、例のくじ引きの一件が、各〻めいめいこう永びくというのが、どうもおれはあの方法がまずかったからだと思うんだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれを殺して、各〻めいめいが、お家の無事を計ろうとしても、おれにはおれの仲間がある。そいつらが、きっとしゃべるぜ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渦まく瀬へ、一抱えの落葉を投げこんだように、その奔激ほんげきすがたは、同じであっても、落葉の一葉一葉の驚きや、動作や、意思は、各〻めいめい違ったものであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり皆さん檀家の各〻めいめい持ちさ。誰にだって、ここんところに、弥陀光如来みだこうにょらいは住んでいらっしゃる筈だからね
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻めいめいの朝湯と化粧に、三時間ぐらいついやされた。首だけよそおったところで、万珍楼まんちんろうの支那料理をとって昼食がすむ。髪結が帰る。洋服の着付師のお定さんが来る。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
農家もかしいでいる屋根が多い。秋も近く、百姓はたださえ忙しいのに、各〻めいめいの家のこともいて
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道理で、この二、三日は、各〻めいめいが手紙を多く書いていた。何となく身仕舞のふうも見えてあった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻めいめい八、九人ずつの侍を連れて、この関の山に集まり、今度こそは、水もらさぬような手配りのもとに、怪しい虚無僧、阿波の国内をうかがおうとする銀五郎、多市などを
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三位卿に呼びつけられて、その人を中心に、何やらひたいをあつめていた書院の席では、ようやく密議のけりがついたらしく、各〻めいめいして、足のしびれをさすりながら立ち上がった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渋谷、長田おさだなどを先に各〻めいめいは会を解いて別れかけた。すると、唐突に、一人が呶鳴った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とその中でも逞しい武士が手を挙げると、女はまりのようにむしろの上へ下ろされた。若侍達は重大な手柄でも仕果たしたかのように、各〻めいめいの盃の前に坐ってやんやという騒ぎ方である。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例の老公好みの浙江せっこうまんじゅうが一個ずつ各〻めいめい、盆に載せられて茶とともに供された。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから平家一門の公達輩きんだちばらは、みえにして、各〻めいめい、名馬を争い持った。名馬を手に入れる事では、屡〻しばしば悶着もんちゃくや喧嘩さえ起った。そういう平家人のあいだでは、こんな事すら云われていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにか緊迫してくるものを各〻めいめいが顔にたたえ出した。自然とそれが人々を無口にさせた。誰の眼も一様に、そこから街端まちはずれの街道を眺めて、生唾なまつばを溜めて待ちしびれている様子に見える。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しい女性を見ると、汗も涼やかに乾くように、足軽たちは各〻めいめい息を休めた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗匠頭巾そうしょうずきんの老人とか、医者とか、僧侶とか、町人の旦那衆と云ったような者ばかりが、ひっそりと、墨のの中に集まって、各〻めいめい、筆と短冊を持ち、しわぶきもせずに俳句を作っているのだった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勧工場かんこうばへはいって、勧工場から吐き出されて来た時には、各〻めいめいが、小さな小箱を一ツずつ胸にかかえていた。豆菊も持っていた。しかし、小さな淋しい顔は、明るい灯をあびるほど沈んでいた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻めいめい、そのままの姿で、ばらばらと別れて江之島神社の裏をとり巻いた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、年暮立くれだちに、各〻めいめいが、土地を飛び、正月の抜け詣りを装って、落ち合う事にしようじゃないか——というような約束が、何日いつからか、土地を離れた五人の間に、出来上がっていたのである。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、各〻めいめいのほうへ、あいさつを兼ねて、銚子を持ってまわった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森啓之助、天堂一角、各〻めいめい小舟へ移って行った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻めいめい、名をいえ。名をいえ」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)