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口外
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こうぐわい
遣ひし事必らず
口外爲べからずと吉平へも
堅く
口止して濟し居たりしが
誰知る者もなく其年も
早十二月となりて
追々年貢の上
納金を
下作より
集けるを
是より
以後の
一生五十
年姫樣には
指もさすまじく、
况て
口外夢さら
致すまじけれど、
金ゆゑ
閉ぢる
口には
非ず、
此金ばかりはと
恐れげもなく、
突もどして
扨つくづくと
詫びけるが、
歸邸その
儘の
暇乞
申立べし如何して
能らんやと
大息吐て言けるにぞ女房は聞て大いに
驚怖長庵に
逢た話しは
容易成ざる事故決して
口外はなさるなと
豫々おまへに言置しに何故
然樣なる一大事を
殘らず差し出だしければ彼の役人どもは其の
金子を請取り此の事決して
口外致すまじと申渡し何國ともなく立去けり
然ば文藏夫婦は役人の後影を伏拜み實に有難き御
慈悲なり然ながら我々身延山を