口占くちうら)” の例文
中には薄々うすうす感づいて沼南の口占くちうらを引いて見たものもあったが、その日になっても何とも沙汰さたがないので、一日社務に服して家へ帰ると
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「旦那、一々さう旦那が仰しやつちや何にもなりません。この御女中の口占くちうらから、いろ/\の事を見付け出すのが、私の方ので」
宗近の言は真率しんそつなる彼の、裏表の見界みさかいなく、母の口占くちうら一図いちずにそれと信じたる反響か。平生へいぜいのかれこれからして見ると多分そうだろう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人の口占くちうらから、あらまし以上のような推察がついた今となっては、客も無下むげじょうこわくしている訳にも行かない。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
婆は此の様を見て「アア貴方は甚蔵の敵でない、敵なら此の犬が斯うは狃染なじみません」余は口軽く「ナニ甚蔵に敵などある者か」と云いて口占くちうらを引くに
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
現場も調べてみなければならぬし、召使たちの口占くちうらも、合わせてみなければならぬ。自宅へ電話をかけて、エッベとオーゲの二人の助手を呼ぶこととする。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
檜笠作りの六助の口占くちうらを引いて、よく聞いておいたこと——懺悔する前には、水垢離の必要がある、護摩壇へ行く前には、御禊の池をおとずれねばならぬ。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第四種(卜筮ぼくぜい編)易筮えきぜい亀卜きぼく銭卜ぜにうら歌卜うたうら太占ふとまに口占くちうら辻占つじうら兆占ちょうせん夢占ゆめうら御鬮みくじ神籤みくじ
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
旦那さまの口占くちうらを引きながら、いい加減の嘘八百をならべ立てて、表に遊んでいるところを見識らない女に連れて行かれたの、それから京へ行って育てられたの、継母ままははにいじめられたのと
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
僕は三好をなじるような語句は用いなかったけれども、彼はこのような結果になったについては、自分にも一半の責めがあることを認め、丁寧な言葉で罪を謝したが、彼の口占くちうらから察すると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お島は嫂の口占くちうらを引いてでも見るように、そう言ってみた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「旦那、いちいちそう旦那がおっしゃっちゃ何にもなりません。この御女中の口占くちうらから、いろいろの事を見付け出すのが、私の方ので」
主人の口占くちうらから、あらまし以上のやうな推察がついた今となつては、客も無下むげじょうこわくしてゐる訳にも行かない。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
助手のオーゲはさっきから、控えの間脇の一室に陣取って、昨夜の召使たちの口占くちうらを調べている。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
要するにこのかみさんも是非坑夫になれと云わぬばかりの口占くちうらで、全然どてらと同意見を持っているように思われた。無論それでよろしい。またそれでなくってもいっこう構わない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにも貴様の口占くちうらを引いて、罪に落そうなんぞというのじゃない、ただ、そういう唄を聞いていると、最も正直な時代の声が聞えるというわけだ、おべっかや、おてんたらと違って
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
花房一郎は足の勇を疑って、同じ社の監督者の地位にある千種を、此処ここまでおびき寄せて口占くちうらを引いて見たのです。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私にはそういう茂十さんの口占くちうらから、この土地を愛しながら愛する土地の人々にも病ゆえに肩身の狭い思いをして暮していた日野涼子の一家の、生前の侘しい生活が思いやられるような気持であった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と千恵は、さりげなくHさんの口占くちうらを引いてみました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「宗近の阿爺おとっさん口占くちうらではどうもそうらしいよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時勇次郎の口占くちうらを引いて、謎の意味を大方覺つたに違ひない——お茶に入れた毒に當つた頃もう一度そつと行つて、いろ/\の細工をしたのは、恐ろしい膽つ玉だ
そのとき勇次郎の口占くちうらを引いて、謎の意味を大方さとったに違いない——お茶に入れた毒に当った頃もう一度そっと行って、いろいろの細工をしたのは、恐ろしい胆っ玉だ
千種十次郎は新聞記者らしく、巧みに相手の口占くちうらから、何んかを手繰たぐり出そうとして居ります。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「小僧ぢやない。小僧の口占くちうらを引く奴が居るんだ」
「小僧じゃない。小僧の口占くちうらを引く奴が居るんだ」