)” の例文
それとも知らずに、御無礼を申したのは、へすへすもわしの落度ぢや。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
四人の博徒に取り囲まれ、切りかかる脇差を左右にわし、脱けつ潜りつしている澄江の姿が、街道の塵埃ほこりを通して見られた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男の我を忘れて、相手を見守るに引きえて、女は始めより、わが前にわれる人の存在を、ひざひらける一冊のうちに見失っていたと見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうも思いえすと、その柳沢に汚されたお宮の肉体に対して前より一層切ない愛着が増して来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
振りえると、妙高続き火打焼山に至る連嶺には、早や旭の光が薔薇色に燃えて、赭色の山膚にちりばめられた雪に宝玉の匂が加わった。かなかな蝉の涼しい声が遠くで聞える。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
のみならず言葉は不従順なしもべである。私達は屡〻言葉の為めに裏切られる。私達の発した言葉は私達が針ほどの誤謬ごびゅうを犯すや否や、すぐにやいばえして私達に切ってかかる。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
淵に臨みて静かに水流の動静を察するに、行きたるものは必らずへる、反へれるものは必らず行く。若きもの必らず老ゆ、生あるもの必らず死す。苦あるものに楽あり、楽あるものに苦あり。
万物の声と詩人 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ここでは歴史が絶えず繰りえされる。都会で用いるものは別として、田舎で使われる雑器の類は特に変遷がおそい。更にさかのぼってこれを使用する人間の習慣に、動きが少ないのだと説いてもいい。
苗代川の黒物 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
聴きおわりたる横顔をまた真向まむこうえして石段の下を鋭どき眼にてうかがう。こまやかにを流したる大理石の上は、ここかしこに白き薔薇ばらが暗きをれてやわらかきかおりを放つ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「南無三宝」と心の中で叫び、島君は身をわせて遁がれようとしたが早くもその肩を掴まれた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
突然風を切って木刀が、頼母の眉間へ飛んで来たので、頼母は瞬間身をわした。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わす間もなければ開らく間もない。甚太郎はパッと転がった、切っ先届かず五分残ったのは甚太郎にとっては天祐でもあろうか、引く太刀に連れて飛び上り二の太刀を避けて横へ飛んだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さっと打ち込む利鎌の光。ハッと島君はわしたが、これも舞踊の利益である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
危くヒョロヒョロと小一郎は、身をわせたが苦しい声で
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうはいかねえ!」ひょいと紋十郎は身をわせた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)