前垂まえだ)” の例文
嫁のお民は、と見ると、この人は肩で息をして、若い母らしい前垂まえだれなぞにもはや重そうなからだを隠そうとしている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
洋服ようふくのポケットや、前垂まえだれのポケットのなかにいれて、チャラ、チャラとらしていましたが、いつのまにか、ヨシさんの姿すがたえなくなりました。
左ぎっちょの正ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
下駄で、前垂まえだれがけの、縞物しまものの着つけの人ばかりの町だ。かわった風体ふうていのものが交ったって目にもはいりはしない。
だからそれを前垂まえだれともエプロンとも云わないで、単にアマサンと称していた。
まアお待ちよと言ったが、なかなか言うことを聞きそうにもないので、洗濯の手を前垂まえだれでそそくさといて、前の縁側に腰をかけて、子供を抱いてやった。そこへ総領の女の児も来て立っている。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
しわのったてのひらにぜにならべて、ほそ指先ゆびさき勘定かんじょうしては、前垂まえだれのなかうつしていました。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
前垂まえだれがけの下から八百屋で買って来た牛蒡ごぼう人参にんじんを出してテーブルの上へのせておいたまま「これはおかずです」とその野菜をいじりながら雑誌を一生懸命に読出したということや
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
このとき、となりとしとった女房にょうぼうが、粉雪こなゆきのちらちらかぜなかを、前垂まえだれをあたまからかぶって小走こばしりにやってきました。そして、まどしたのすぐおくさまのしたって、ちいさなこえ
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、こんなに、ありがとうぞんじます。」と、女房にょうぼうはいって、かぶっていた前垂まえだれをとって、そのなかこめをいれてもらいました。かぜは、女房にょうぼう灰色はいいろがかったかみいています。
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きよは、いたりしてずかしいとおもったので、前垂まえだれで、なみだをふきました。
気にいらない鉛筆 (新字新仮名) / 小川未明(著)