凄絶せいぜつ)” の例文
河村は見るも物凄い形相ぎょうそうとなり、真紅な口をガッと開いたかと思うと、両手で虚空こくうをつかんで、そのまま絶命した。実に悲惨ひさんとも凄絶せいぜつともいいあらわし難い彼の最期だった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
凄絶せいぜつ、惨絶、奇絶、怪絶、おそらくは観客諸君の夢にも想像されぬところでござりましょう
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その凄絶せいぜつなる可き慟哭にも、同じく涙にむせばうとしてゐた乙州は、その中にある一種の誇張に対して、——と云ふのがおだやかでないならば、慟哭を抑制すべき意志力の欠乏に対して
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おりから淡々あわあわしいつきひかり鉄窓てっそうれて、ゆかうえあみたるごと墨画すみえゆめのように浮出うきだしたのは、いおうようなく、凄絶せいぜつまた惨絶さんぜつきわみであった、アンドレイ、エヒミチはよこたわったまま
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
れ唯己がまゝに鳴くなり、しかも人をして凄絶せいぜつ惋絶わんぜつならしむ、詩人の天地に於ける亦固より彼の音響なり、渠れ唯己がまゝに歌ふ、其節奏は固より彼れの節奏なり、其音響は固より彼の音響なり
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
だが、その次に始まったのは彼個人の凄絶せいぜつな死との格闘、人間の苦悩で、強要によって起りはしたが、燃焼はそれ自体であり、強要と切り離して、それ自体として見ることも可能だという考えである。
特攻隊に捧ぐ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
当時の光景、いかに凄絶せいぜつなるものなりしぞ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
凄絶せいぜつ、惨絶、奇絶、怪絶、おそらくは観客諸君の夢にも想像されぬところでござりましょう
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
をりから淡々あは/\しいつきひかり鐵窓てつさうれて、ゆかうへあみたるごと墨畫すみゑゆめのやうに浮出うきだしたのは、ふやうなく、凄絶せいぜつまた慘絶さんぜつきはみつた、アンドレイ、エヒミチはよこたはつたまゝいきころして
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何を申すも猛獣同士の闘いの事なれば、いずれか傷つきたおれますは必定ひつじょう、この一回を御見逃しあっては二度と見られぬ凄絶せいぜつ惨絶の大場面、当日は全市民各位の御来観御声援を切望致す次第で御座います。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)