八幡様はちまんさま)” の例文
旧字:八幡樣
翌日二人は、八幡様はちまんさまの小さな森に出かけて、狸の巣をくまなく探し廻りました。しかしどこにもそれらしいのは見当りませんでした。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
久しいあとで、その頃薬研堀やげんぼりにいた友だちと二人で、木場きばから八幡様はちまんさままいって、汐入町しおいりちょう土手どてへ出て、永代えいたいへ引っ返したことがある。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨日きのうもちょうどそんな事を考えながら歩いて、つまるところがペンキの看版かんばんかきになろうが稲荷いなり八幡様はちまんさまの奉納絵を画こうがかまわない。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おれは踴なら東京でたくさん見ている。毎年八幡様はちまんさまのお祭りには屋台が町内へ廻ってくるんだから汐酌しおくみでも何でもちゃんと心得ている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
産土うぶすな神々かみがみもうすにおよばず、八幡様はちまんさまでも、住吉様すみよしさまでも、ただしはまた弁財天様べんざいてんさまのような方々かたがたでも、その御本体ごほんたいことごとくそうでないものはございませぬ。
それをきくと私は、子供の私は、身震みぶるいするのを感じた。そこに行くには八幡様はちまんさまの森の大樹の下を通らねばならない。
幸いとお神さんの亭主の妹の家が八幡様はちまんさまの前だというので、そこへ行って羽織だけつまみ洗いをしてもらうことにして、その間寒さを堪えて公園の中で待っていた。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
はいあのわしの村の鎮守様は八幡様はちまんさまでごぜえます、其の別当は真言宗で東覚寺とうかくじと申します、其の脇に不動様のお堂がごぜえましてわたくし両親ふたおやが子がえって其の不動様へ心願しんがんを掛けました処が
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
父と一緒に深川の八幡様はちまんさまへ行った時
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その晩月が出るのを待って、三人は八幡様はちまんさまへ出かけました。次郎七と五郎八とはなわを持ち、老人は南天なんてんの木の枝をつえについていました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「さあ、おい、起きないか起きないか、石見橋いわみばしはもう越した、不動様の前あたりだよ、すぐ八幡様はちまんさまだ。」と、しまの羽織で鳥打をかぶったのが、胴のに円くなって寝ている黒の紋着もんつきを揺り起す。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして狸のお婆さんを皆に紹介して、一部始終しじゅうのことを話し、八幡様はちまんさま綺麗きれいにしたのもこの人だと言ってきかせました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)