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兄樣
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にいさん
お
召物が
濡れますと
言ふを、いゝさ
先させて
見てくれとて
氷嚢の
口を
開いて
水を
搾り
出す
手振りの
無器用さ、
雪や
少しはお
解りか、
兄樣が
頭を
冷して
下さるのですよとて
番町の
旦那樣お
出と
聞くより
雪や
兄樣がお
見舞に
來て
下されたと
言へど、
顏を
横にして
振向うともせぬ
無禮を、
常ならば
怒りもすべき
事なれど、あゝ、
捨てゝ
置いて
下さい
今日癒りまする、
癒つて
兄樣のお
袴を
仕立て
上げまする、お
召も
縫ふて
上げまする、それは
辱し
早く
癒つて
縫ふて
呉れと
言へば、
左樣しましたらば
植村樣を
呼んで
下さるか