伐出きりだ)” の例文
昨日あたり山から伐出きりだして来たといわぬばかりの生々なまなましい丸太の電柱が、どうかすると向うの見えぬほど遠慮会釈もなく突立っている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其等の木はことごとく自分の山から伐出きりだされ自分の眼の前でかんなを掛けられたものであり、其等の食物の出所も
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その後また同じ山中に枕木まくらぎ伐出きりだしのために小屋をかけたる者ありしが、夕方になると人夫の者いずれへか迷い行き、帰りてのち茫然ぼうぜんとしてあることしばしばなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三十有余人を一家いっけめて、信州、飛騨ひだ越後路えちごじ、甲州筋、諸国の深山幽谷ゆうこくの鬼を驚かし、魔をおびやかして、谷川へ伐出きりだす杉ひのきかしわを八方より積込ませ、漕入こぎいれさせ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
角川の家は代々の郷士で、かたわらに材木伐出きりだしの業を営んでいたので、家の雇人等も木挽こびきの職人と一所に山奥へ入ることが屡々しばしばある。重蔵も十二三歳の時から山へ入った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
是は信州と越後との境から落して参り、四万川と称え、流れの末が下山田川しもやまだがわがっして吾妻川へ落しますゆえ、山から材木を伐出きりだし、尺角しゃくかく二尺角あるいは山にて板にき、貫小割ぬきこわりは牛のおろして参ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんの、お前様めえさまさるとほ二十八方仏子柑にじふはつぱうぶしかん山間やまあひぢや。伐出きりだいて谿河たにがはながせばながす……駕籠かごわたしの藤蔓ふぢづるむにせい、船大工ふなだいくりましねえ。——私等わしらうちは、村里町むらざとまち祭礼まつり花車人形だしにんぎやう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)