並大抵なみたいてい)” の例文
それらの點で失敗しくじるといけないといふ懸念けねんは、うまれつきな身體の弱さにも増して私を惱ました。その身體の弱さの苦勞も並大抵なみたいていではなかつたが。
なにせよ、ともづなを解く混雑まぎわに、八方で光る眼をくらまし、首尾よく三ツのつづらを船底へ持ち込もうという危ないからくり、並大抵なみたいていな気苦労ではない。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左様そうですか、並大抵なみたいていのものなら斬ってしまいますが、あの若い方はどうも病身のようだから斬れまいねえ」
ややもすればはやり勝ちな、一党の客気かっき控制こうせいして、おもむろに機の熟するのを待っただけでも、並大抵なみたいていな骨折りではない。しかも讐家しゅうかの放った細作さいさくは、絶えず彼の身辺をうかがっている。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これは並大抵なみたいていの人の持つ品ではない、きっと立派なお侍さんの持物だよ、御番所へお届けを
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
きのうもきょうもない春重はるしげのことながら、二十七のきょうのわかさで、おんなかずは千にんちかくもつくくしたのが自慢じまんなだけに、並大抵なみたいていのことでは興味きょうみかず、師匠ししょうとおりに美人画びじんがなら
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
イヤ一人ひとり小供こども満足まんぞく仕上しあげるにはなかなか並大抵なみたいてい苦心くしんではござらぬ。
「そりゃ兄さんの気むずかしい事は誰にでも解ってます。あなたの辛抱も並大抵なみたいていじゃないでしょう。けれども兄さんはあれで潔白すぎるほど潔白で正直すぎるほど正直な高尚な男です。敬愛すべき人物です……」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「随分お暑いでしょう、並大抵なみたいていじゃありませんわねえ」
った衣装いしょうというのなら、だれしょうとて、べつ邪間じゃまになるまいとおもわれる、そのおびだけに殊更ことさらに、夜寝よるねときまで枕許まくらもとつけての愛着あいちゃくは、並大抵なみたいていのことではないと、うたがうともなくうたがったのが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)