両岸りやうがん)” の例文
旧字:兩岸
つもる雪もおなじく氷りて岩のごとく、きしの氷りたるはし次第しだいに雪ふりつもり、のちには両岸りやうがんの雪相合あひがつして陸地りくちとおなじ雪の地となる。
雨がれると水に濡れた家具や夜具やぐ蒲団ふとんを初め、何とも知れぬきたならしい襤褸ぼろの数々は旗かのぼりのやうに両岸りやうがんの屋根や窓の上にさらし出される。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
人ひとりあらはれわたる土の橋橋の両岸りやうがんただ冬の風
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
岸のむか逆巻さかまき村にいたる所にはしあり、猿飛橋さるとびばしといふ橋のさまを見るに、よしや猿にてもつばさあらざればとぶべくもあらず、両岸りやうがん絶壁ぜつへきにて屏風びやうぶをたてたるがごとくなれども
春秋はるあき時候の変り目に降りつゞく大雨たいう度毎たびごとに、しば麻布あざぶの高台から滝のやうに落ちて来る濁水は忽ち両岸りやうがんに氾濫して、あばらの腐つた土台からやがては破れたたゝみまでをひたしてしまふ。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さてまへにいへる渋海しぶみ川にてはる彼岸ひがんころ、幾百万の白蝶はくてふ水面すゐめんより二三尺をはなれてもすれあふばかりむらがりたるが、たかさは一ぢやうあまり、両岸りやうがんかぎりとして川下より川上の方へ飛行とびゆく