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一顧
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いっこ
ふりがな文庫
“
一顧
(
いっこ
)” の例文
嘗
(
かつ
)
てあんなにも恋い
焦
(
こが
)
れていたその人を、
一顧
(
いっこ
)
の価値もない腐肉の塊であると観じて、清く、貴く、
豁然
(
かつぜん
)
と死んで行ったであろうか。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私の
深切
(
しんせつ
)
に
一顧
(
いっこ
)
をも与えず、邪魔だからどいて居れと叱った所のその人を、私は今でも数人の臨検者の中から見付け出すことが出来る。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
腰抜け彌八が
心魂籠
(
しんこんこ
)
めて書いた三百六十何本の色文も、浮気な娘達の
一顧
(
いっこ
)
も買わずに、灰や泥になってしまったことでしょう。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが、そんな若い頃の夢は、今の現実のまえには、
一顧
(
いっこ
)
の価もないし、むしろ
呪
(
のろ
)
わしい気がよけい胸を噛むばかりである。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえその石が金に置き換えられようと銀に置き換えられようと、それが事実の道端に転がっている以上、僕に取って
一顧
(
いっこ
)
の価値もないことは石同様なのだ。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
もし万一ミカンの実の中に毛が
生
(
は
)
えなかったならば、ミカンは
食
(
く
)
えぬ果実としてだれもそれを
一顧
(
いっこ
)
もしなかったであろうが、
幸
(
さいわ
)
いにも
果中
(
かちゅう
)
に毛が
生
(
は
)
えたばっかりに
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「なぜそんなつまらない事を聞くのよ」と云った彼女は、ほとんど
一顧
(
いっこ
)
に
価
(
あたい
)
しない風をした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
駅員らは何か話合うていたらしく、自分の切願に
一顧
(
いっこ
)
をくれるものも無く、挨拶もせぬ。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
もとより土居光一の予想は外れて、あやかさんはもはや彼には
一顧
(
いっこ
)
にも及ばなかったが、然し一馬も決して幸福な結婚ではなかったようだ。尤も別に浮気をするというような事ではない。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
湯銭さえ受けとれば後は御勝手といわぬばかりに、番台の男はこくりこくりやっているし、もう数少なの客達も、皆めいめいの帰りを急いで、氏や老人に
一顧
(
いっこ
)
さえ与える者はいなかった。
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
赤いところから赤いところへ、なろうことならば赤いところだけ通って歩こうとする。頂きなどはたいてい赤くないから
一顧
(
いっこ
)
も与えられない。その手前から戻ってくるか、さもなければ捲いてしまう。
ピークハンティングに帰れ
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
なべて自然の風物というものは見る人のこころごころであるからこんな所は
一顧
(
いっこ
)
のねうちもないように感ずる者もあるであろう。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それらの者には
一顧
(
いっこ
)
もせず、そうかといって迎えに来ている知人もないらしく、美少年は小猿をかついで、真っ先にこの
湊
(
みなと
)
から姿を消してしまった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗澹
(
あんたん
)
たる闇の中に
一縷
(
いちる
)
の光明が燃え始めた。それは犯罪者の屡々
陥
(
おちい
)
る馬鹿馬鹿しい妄想であったかも知れない。第三者から見れば
一顧
(
いっこ
)
の価値もない愚挙であったかも知れない。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これを
栽植
(
さいしょく
)
したものが
時折
(
ときおり
)
神社の庭などにあるのだが、そんな場合、多少実が大きく、小さいコウジの実ぐらいになっているものもあれど、食用果実としてはなんら
一顧
(
いっこ
)
の価値だもないものである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
わしが湖畔の道へかかると、松原の中で、
茜
(
あかね
)
の陣羽織を着た男が、余念なく、馬の稽古を励んでおる。この方の行列にさえ
一顧
(
いっこ
)
もくれず馬ばかり飛ばしているのだ。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして信長の
一顧
(
いっこ
)
の言、或いは一笑にでも触れて
退
(
さ
)
がれば、献物の珍器
宝什
(
ほうじゅう
)
や美酒
佳肴
(
かこう
)
の百倍千倍にも値いするものを獲たような歓びを抱いてみな帰り去るのである。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
一顧
(
いっこ
)
をみせて通るのが、せめてここにある彼の家族的なくつろぎといえばいえる。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
愁然と、それへ
一顧
(
いっこ
)
の
憐
(
あわ
)
れみを送っているもあり、また「はや身軽」と勢いづいて登って行く者もある。すると、その先頭でとつぜん大きな声があった。「敵だッ!」と下へ教える。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
文観は、馬上に返ると、高い所からの
一顧
(
いっこ
)
の愛想を道誉に残して行ってしまった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀吉のすがたが見えても、ここの奉行や
督励
(
とくれい
)
している侍たちは、彼をふり返る者もない。また、何千の木工、土工、左官、
石工
(
いしく
)
、あらゆる
工匠
(
たくみ
)
や人夫たちも、
一顧
(
いっこ
)
しているすきもなかった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど藤吉郎には、
一顧
(
いっこ
)
の
会釈
(
えしゃく
)
もしなかった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“一顧”の意味
《名詞》
ちらりと振り返って見ること。ちょっと注意すること。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
顧
常用漢字
中学
部首:⾴
21画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥