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一睡
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いつすゐ
平常の
部屋に
倚りかゝる
文机の
湖月抄こてふの
卷の
果敢なく
覺めて
又思ひそふ
一睡の
夢夕日かたぶく
窓の
簾風にあほれる
音も
淋し。
館の
屋根に
渦いてかゝりますと、
晝間の
寢床——
仙人は
夜はいつでも
一睡もしないのです、
夜分は
塔の
上に
上つて、
月に
跪き、
星を
拜んで
言ふまでの
事ではあるまい。
昨日……
大正十二
年九
月一
日午前十一
時五十八
分に
起つた
大地震このかた、
誰も
一睡もしたものはないのであるから。