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一掬
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いっきく
ふりがな文庫
“
一掬
(
いっきく
)” の例文
一掬
(
いっきく
)
の涙を催さしめるが、しかし隼人正の生涯については諸書の所伝がまち/\であって、必ずしも豊内記の説くところと一致しない。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一刻もはやくここは去るべき場合とは知りながら、又四郎は、あわれと、それに
一掬
(
いっきく
)
の
涙
(
なみだ
)
をそそいでやらずにいられなかったらしいのである。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
必ず
一掬
(
いっきく
)
同情の涙に
咽
(
むせ
)
ぶべきなれど、葉石はそもこれを何とか見るらん、思えば法廷にて彼に面会することの気の毒さよ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
花に言わすれば、
誠
(
まこと
)
に
迷惑至極
(
めいわくしごく
)
と
歎
(
かこ
)
つであろう。花のために、
一掬
(
いっきく
)
の涙があってもよいではないか。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
雪江さんは
言
(
げん
)
ここに至って感に
堪
(
た
)
えざるもののごとく、
潸然
(
さんぜん
)
として
一掬
(
いっきく
)
の
涙
(
なんだ
)
を紫の
袴
(
はかま
)
の上に落した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
旧
(
ふる
)
き代の
富貴
(
ふうき
)
、
栄耀
(
えよう
)
の日ごとに
毀
(
こぼ
)
たれ焼かれて参るのを見るにつけ、
一掬
(
いっきく
)
哀惜の涙を
禁
(
とど
)
めえぬそのひまには、おのずからこの
無慚
(
むざん
)
な乱れを
統
(
す
)
べる底の力が見きわめたい
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
と、彼のからだは、わがてのひらの水の中へ、頭を先にするりとばかりすべりこみ、そこに
溢
(
あふ
)
れるただ
一掬
(
いっきく
)
の水となり、せせらぎへ、ばちゃりと落ちて、流れてしまった。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
わがいのちを断って見せるよりほかには意志表示の仕方を知らぬ
怜悧
(
れいり
)
なるがゆえに、慈愛ふかきがゆえに、
一掬
(
いっきく
)
の清水ほど弱い、これら一むれの青年を、ふびんに思うよ。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
筆者は薄幸なりし彼女の半生に
一掬
(
いっきく
)
の涙を
濺
(
そゝ
)
ぐに
止
(
とゞ
)
まって、敢て彼女を責めようとはせぬ。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
一掬
(
いっきく
)
の水の大海より多きことあり、この理を知るや、と天神の例の如くに難問を下すに、例のごとく王らはまた答へを
為
(
な
)
し得で困りけれど、彼大臣は例のごとく老父の
教
(
おしえ
)
を得て
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
人の世のあじきなさ、しみじみと骨にも
透
(
とお
)
るばかりなり。もし妾のために同情の
一掬
(
いっきく
)
を
注
(
そそ
)
がるるものあらば、そはまた世の不幸なる人ならずばあらじ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
我が子の腕にある平中の歌に
一掬
(
いっきく
)
の涙を惜しまなかった母は、父と云うものをどう思っていたのであろうか、滋幹はついぞ母からそれを聞かされたことはなかった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
旧
(
ふる
)
き代の
富貴
(
ふうき
)
、
栄耀
(
えよう
)
の日ごとに
毀
(
こぼ
)
たれ焼かれて参るのを見るにつけ、
一掬
(
いっきく
)
哀惜の涙を
禁
(
とど
)
めえぬそのひまには、おのづからこの
無慚
(
むざん
)
な乱れを
統
(
す
)
べる底の力が見きはめたい
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この島の名を有名にさせ、武蔵のために
敗
(
やぶ
)
れて
敢
(
あえ
)
なく若い偉材をこの一小島に埋めた佐々木小次郎に——
一掬
(
いっきく
)
の涙をそそいで墓石を建てた古人は、いったい誰だったか。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世ニモ不幸ナ人ガアレバアルモノダト思ッテアナタノタメニ
一掬
(
いっきく
)
ノ涙ナキヲ得マセン。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一挙に速戦即決を迫らんとしていたのが、ついにその事の半ばに、敵甲軍の盛返すところとなったので、謙信の悲壮極まる覚悟のほどを思いやれば、彼の
遺恨
(
いこん
)
に対して
一掬
(
いっきく
)
の悲涙なきを得ない。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
掬
漢検準1級
部首:⼿
11画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥