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としよりら
老人等は
一先自分の
家に
歸つた。
卯平も
隣の
森の
陰翳が一
杯に
掩うて
居る
狹い
庭に
立つた
時は、
勘次はおつぎを
連れて
開墾地へ
出た
後であつた。
寶引にも
酒にも
加はらぬ
老人等は
棚の
周圍を
廻つてからは
歸つたものも
有つて
寮には
幾らか
人數も
減つて
居たが
老人等は
自分の
騷ぐ
方にばかり
心を
奪はれて
卯平のことはそつちのけにした
儘であつた。
卯平はそれでも
種々な
百姓料理の
鹽辛い
重箱へ
箸をつけて
近頃になく
快よかつた。
見れば血に
塗れたる樣子は全たく
人殺しにて
骸は海へ
投込れしなるべしと
早速土地の名主へ
屆けゝれば
年寄等が來り
改めしに
死骸は見えねども人殺しに
相違なければ
等閑ならぬ大事なりと
此段奉行所へも
屆出しにぞ其事平野村へ聞えければ同村の者共
馳來れり此品々を