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てつもん
近づいて
見ると、
鐵門の
上部には、
岩に
刻まれて「
秘密造船所」の五
字が
意味あり
氣に
現はれて
居つた。
『
此處です。』と
一言を
殘して、
先づ
鐵門を
窬つた、
私もつゞいて
其中に
入ると、
忽ち
見る、
此處は、
四方數百間の
大洞窟で、
前後左右は
削つた
樣な
巖石に
圍まれ、
上部には
天窓のやうな
屏風岩の
上を二十ヤードばかり
進むと、
正面に
壁のやうに
屹立つたる
大巖石の
中央に、
一個の
鐵門があつて、
其鐵門の
前には、
武裝せる
當番の
水兵が
嚴肅に
立つて
居つたが、
大佐等の
姿を
見るより
巍々たる高閣雲に
聳え。打ち
繞らしたる
石垣のその正面には。
銕門の柱ふとやかに
厳めしきは。いわでもしるき貴顕の
住居。
主人の
公といえるは。西南
某藩の
士にして。