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しゆつきん
食事を
濟ましても、
出勤の
時刻にはまだ
大分間があつた。
坂井では
定めて
騷いでるだらうと
云ふので、
文庫は
宗助が
自分で
持つて
行つて
遣る
事にした。
お
前もお
聞きよ、
私が
毎日出勤するあの
破堂の
中で、
顏は
汗だらけ、
砂埃、
其の
上蜘蛛の
巣で、
目口も
開かない、
可恐く
弱つた
處を、
此のお
方だ、
袖で
綺麗にして
下すつた。
そのうち
朝餉も
濟んで、
出勤の
時刻が
漸く
近づいた。けれども
御米は
眠りから
覺める
氣色もなかつた。
宗助は
枕邊に
曲んで、
深い
寐息を
聞ゝながら、
役所へ
行かうか
休まうかと
考へた。