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しうじう
右七
人の
者共天一坊
身分聢と
相糺さず
主從の
盟約を致し候
段不屆の致し
方に付中追放申付る
昨夜雇つた
腕車が二
臺、
雪の
門を
叩いたので、
主從は、
朝餉の
支度も
匇々に、
身ごしらへして、
戸外に
出ると、
東雲の
色とも
分かず
黄昏の
空とも
見えず、
溟々濛々として、
天地唯一白。
唯急ぎに
急がれて、こゝに
心なき
主從よりも、
御機嫌ようと
門に
立つて、
一曳ひけば
降る
雪に、
母衣の
形も
早や
隱れて、
殷々として
沈み
行く
客を
見送る
宿のものが、
却つて
心細い
限りであつた。