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さむらひまち
穴のやうな
眞暗な
場末の
裏町を
拔けて、
大川に
架けた、
近道の、ぐら/\と
搖れる
一錢橋と
云ふのを
渡つて、
土塀ばかりで
家の
疎な、
畠も
池も
所々、
侍町を
幾曲り、で
面の
長さは三
尺ばかり、
頤の
痩た
眉間尺の
大額、ぬつと
出て、
薄霧に
包まれた
不氣味なのは、よく
見ると、
軒に
打つた
秋祭の
提灯で、一
軒取込むのを
忘れたのであらう、
寂寞した
侍町に
唯一箇。
地方でも
其界隈は、
封建の
頃極めて
風の
惡い
士町で、
妙齡の
婦人の
此處へ
連込まれたもの、また
通懸つたもの、
況して
腰元妾奉公になど
行つたものの
生きて
歸つた
例はない、とあとで
聞いた。