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おてんき
「
本當に
好い
御天氣だわね」と
半ば
獨り
言の
樣に
云ひながら、
障子を
開けた
儘又裁縫を
始めた。すると
宗助は
肱で
挾んだ
頭を
少し
擡げて
「
寒いでせう、
御氣の
毒さまね。
生憎御天氣が
時雨れたもんだから」と
御米が
愛想を
云つて、
鐵瓶の
湯を
注ぎ
注ぎ、
昨日煑た
糊を
溶いた。
宗助も
樹の
多い
方角に
向いて
早足に
歩を
移した。
今日の
日曜も、
暢びりした
御天氣も、もう
既に
御仕舞だと
思ふと、
少し
果敢ない
樣な
又淋しい
樣な
一種の
氣分が
起つて
來た。
吁! はたして昨日が
晴日であつたかどうかも