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いんやう
承まはり候へば
此廓の火宅を今日しも
御放れ候て
凉しき方へ
御根引の
花珍敷新枕御羨敷は物かは
殊に殿には
木そもじ樣は
土陰陽を起し
陽は
養にして一
生養ふを
そも/\越後国は北方の
陰地なれども
一国の内
陰陽を
前後す。いかんとなれば天は西北にたらず、ゆゑに西北を
陰とし、地は東南に
足ず、ゆゑに東南を
陽とす。
これも又家内の
陰陽前後して
天理に
違ふゆゑ家の
亡るもと也。
大岡殿
默止汝には問ぬぞ其方は先名主惣左衞門が後家にあり
乍ら誰か
媒妁にて九郎兵衞の
妻にや成しやと申さるゝにお
深はシヤア/\として
否誰も
媒酌人は御座なくと云に大岡殿
大音にて大
白痴め天有ば地あり
乾坤和合
陰陽合體して夫婦となる一夫一婦と雖も私しに
結婚なすべからず
然るを
越後の地勢は、西北は大海に
対して陽気也。東南は
高山連りて陰気也。ゆゑに西北の
郡村は雪
浅く、東南の
諸邑は雪
深し。是
阴阳の
前後したるに
似たり。
是は
天然に
阴阳の
気運に
属する所ならんか。
件の
如く雪中に糸となし、雪中に
織り、雪水に
洒ぎ、雪上に
曬す。雪ありて
縮あり、されば越後縮は雪と人と
気力相半して
名産の名あり。