はづ)” の例文
ことしは芳之助よしのすけもはや廿歳はたちいま一兩年いちりやうねんたるうへおほやけつまとよびつまばるゝぞとおもへばうれしさにむねをどりて友達ともだちなぶりごともはづかしく
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
日本につぽんわかひとは、いま鸚鵡あうむ一言ひとことくかかないに、やりをそばめたはづかしい、ばつたりゆかに、俯向うつむけにたふれて潸々さめ/″\くんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朋友ともだちまことある事人もはづべき事也、しかるを心なきともがらかのふんをたづねありき、代見立しろみたてふんあればかならず種々しゆ/″\じゆつつくして雁のくるをまちてとらふ。
ひかるを見ておつやさんが母と叔母の前で陰陽かげひなたをすると云つて罵しつておいでになつた日には、私は思はずヒステリーに感染したはづかしい真似をしました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかるに澤の井は其後漸くつきかさなり今はつゝむに包まれず或時あるとき母に向ひはづかしながら徳太郎ぎみ御胤おんたね宿やどしまゐらせ御内意ごないい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
實際じつさいこのごろのように地震ぢしん火災かさい噴火ふんかなどになやまされつゞきでは、かへつてはづかしいかんじもおこるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其方も見つらん、さんぬる春の花見の宴に、一門の面目とたゝへられて、舞妓まひこ白拍子しらびやうしにも比すべからんおの優技わざをば、さも誇り顏に見えしは、親の身の中々にはづかしかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
とにかくあんまりつよくもなく、かと言つてまた格別かくべつはづかしいほどよわわけでもなく、風も先づ正正堂堂どうどうとして至極しごくち着きはらつた方、正に兄たりかたく弟たりかたしのくみ合せだ。
お元は不意に、ツツ放したやうな調子で物を言ひましたが、自分の態度がはづかしいと思つたか、胡麻鹽頭を小刻みに振つて、何やらブツブツ言ひながら顏をそむけてしまひました。
けれども彼はそんなことに少しも同情などは要らないと云つた風に見えた。それで私は何時かの自分の行爲を思ひ出して、同情を彼に寄せようとしたのをはづかしいとさへ思つた。
まくらしたや、寐臺ねだい何處どこかに、なにかをそツとかくしてく、れはぬすまれるとか、うばはれるとか、氣遣きづかひめではなくひとられるのがはづかしいのでさうしてかくしてものがある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『イヤ如何どう愚論ぐろんばかりではづかしう御座ございます、しかしあれでもわたくしちから一杯いつぱいなのです。』
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
へい/\もう姓名なまへまうすのは、おはづかしうてまうせませぬが、斯様かやう御親切ごしんせつうへげて、御飯ごぜんまでくださる貴方様あなたさまのことでございますから、かくさず申上まうしあげますが、わたくし芝片門前しばかたもんぜんりました
何方いづかたの雲路にわれも迷ひなん月の見るらんこともはづかし
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そんなにほめられるとあたしはづかしいわ
かほもほてるやはづかしの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
つねなんともおもはぬ島田しまだがめ今日けふばかりはづかしいとゆふぐれのかゞみまへなみだくむもあるべし、きくのおりきとても惡魔あくまうまがはりにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ よるといふ假面めんけてゐればこそ、でなくばはづかしさにこのほゝ眞赤まっかにならう、今宵こよひうたことをついおまへかれたゆゑ。
いや、おはづかしい、おけるやうなのではござりません、それに夜店よみせひましたので、御新姐樣ごしんぞさま、おれましてはきたなうござります。」
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
して居ては家業に出る事もならず此方のあごて仕舞ぞや此罪このつみは皆お前の亭主へ懸て行よく/\のごふつくばりなりと己等が迷惑めいわくまぎれに種々はづかしめければ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この目的もくてきたつしてこそわれ/\は他國人たこくじんたいしてはづかしいといふかんじからはじめてまぬかられるであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
難義なんぎをさせますかと思ひますれば、誠におはづかしいことでございます。
うるはしきかな、山や水や、いつはりなく、そねみなく、にくみなく、あらそひなし。人は生死のちまたに迷ひ、世は興亡こうばうのわだちをめぐる。山や、水や、かはるところなきなり。おもへばはづかしきわが身かな。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
はなはづかしく藤棚ふぢだな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
いまだに宿やどとてもさだまるまじく、はゝ此樣こんになつてはづかしい紅白粉べにおしろい、よし居處ゐどころわかつたとてひにてもれまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いゝえ、おはづかしい、御目おめけるやうなのではござりません。それに、夜店よみせひましたので、お新造樣しんぞさまれましてはきたなうござります。」
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あとなしたるばちならんと獨り心にくよ/\思ひながらゆくに又向ふより侍士の來るを見てはなみだながし人にかほを見らるゝもはづかしく思ひて歩行あるくゆゑ肝心かんじん渡世とせいの紙屑を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其故それゆゑ著者等ちよしやら地震學ぢしんがくもつ世界せかいほこらうなどとはおもつてゐないのみならず、此頃このごろのように、わが國民こくみん繰返くりかへ地震ぢしん征服せいふくせられてみると、むしはづかしいような氣持きもちもする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さしてなにとははれねども次第々々しだい/\心細こゝろぼそおもひ、すべて昨日きのふ美登利みどりおぼえなかりしおもひをまうけてものはづかしさふばかり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
百兩ひやくりやうをほどけばひとをしさらせる)古川柳こせんりうたいしてはづかしいが(特等とくとうといへば番頭ばんとうをしさり。)は如何いかん? 串戲じようだんぢやあない。が、事實じじつである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞしある意味いみける世界第一せかいだいゝちのこの火山かざんおいひと觀測所かんそくじよをもゆうしないことは、外國がいこく學者がくしやたいしてもはづかしくおもつてゐたが、いま京都帝國大學きようとていこくだいがく觀測所かんそくじよがこゝに設立せつりつされてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
此樣こんつても其方そちらへの義理ぎりばかりおもつてなさけないことる、多少たせう教育けういくさづけてあるに狂氣きやうきするといふは如何いかにもはづかしいこと
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしとしては、出来できるだけのことはしました。——まをしてはおはづかしいやうですが、実際じつさい一月ひとつきばかりは、押通おつとほませんくらゐ看病かんびやうはしましたが。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不審いぶかしゝそれほどまでに御嫌おきらひになるほどならやさしげな御詞おことばなぜおほせおかれけん八重やへおもふもはづかしきまでときうれしかりしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あの……じつ貴方あなたが、あそばすつてことぞんじてりましたものですから、……おはづかしうござんすわね……」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だから横町よこてう野蕃漢じやがたら馬鹿ばかにされるのだとひかけてよわいをはづかしさうな顏色かほいろ何心なにごゝろなく美登利みどり見合みあはつまの可愛かわゆさ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さけんだがひません。むかしのことかんがへると、病苦びやうくすくはれたおよねさんにたいして、生意氣なまいきらしくはづかしい。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やゝしばしありて雪子ゆきこいきしたきはめてはづかしげのひくこゑして、もう後生ごしやうねがひで御座ござりまする、其事そのことふてくださりますな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……まをしやうもござんせん、あさましい、はづかしい、くるしい、そして不思議ふしぎひましたのでございます。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千代ちいちやん今日けふすこはうかへと二枚折まいをり屏風べうぶけてまくらもとへすは良之助りやうのすけだせし姿すがたはづかしくきかへらんとつくもいたくせたり。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「へ、へ、ころぶと、そこらのはなはづかしい。……うつ、へ、へ。御尢ごもつともだで。旦那だんなはやいだやあ。」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れははづかしさにおもてあかみて此膝これなるふみとりかくすべきか、づるはこゝろやましければなり、なにかはかくさん。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おなつて、婿君むこぎみから、さきむじて親書しんしよて、——病床びやうしやうしてより、衣絵きぬゑはどなたにもおかゝことはづかしがり申候まをしさふらふ女気をんなぎを、あはれ、御諒察ごりやうさつあつて
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本宅ほんたく三番町さんばんちやう何處どこやらにて表札へうさつればむゝひとうちかと合點がてんのゆくほどの身分みぶんいまさら此處こゝにははずもがな、名前なまへはづかしければ病院びやうゐんれることもせで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わし其時分そのじぶん果敢はかないもので、さう天氣てんきふねるのは、じつあしはうであつたが。出家しゆつけ生命いのちをしむかと、ひとおもはくもはづかしくて、怯氣々々びく/\もので乘込のりこみましたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はれるにつけてなん言譯いひわけ理由りゆうもなく、口惜くやしきかかなしきかはづかしきか無茶苦茶むちやくちやいてかほもあげぬを、おたみなほも何事なにごとをかいはんとするをりかどにとまるれいくるまおと
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三世さんぜ一娑婆ひとしやば因果いんぐわ約束やくそくつながつたと、いづれも發起仕ほつきつかまつり、懺悔ざんげをいたし、五欲ごよくはなれて、たゞいまでは、それなる盲人めくらともろともに、三人さんにん一所いつしよに、つゑ引連ひきつれて、ひるおもてはづかしい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をりからすこあつくるしくとも半天はんてんのぬがれぬはづかしさ、らうめづらしくうれしきを、ゆめかとばかり辿たどられて、このがつあたつきとあるを、ひとにははれねどもゆびをるおも
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
糸崎行いとざきゆき——おはづかしいが、わたし方角はうがくわからない。たなほこりはらひながら、地名辭典ちめいじてん索引さくいんると、糸崎いとざきふのが越前國ゑちぜんのくに備前國びぜんのくにとにしよある。わたし東西とうざい、いや西北せいほくまよつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)