思出おもひだ)” の例文
そのわすがたあぢかされて、ことくが——たび思出おもひだしては、歸途かへりがけに、つい、かされる。——いつもかへとき日暮ひぐれになる。
ボリ/\みつゝ、手酌てじやくで、臺附だいつき硝子杯コツプかたむけたが、何故なぜか、とこなか夜具やぐかぶつて、鹽煎餅しほせんべいをおたのにした幼兒をさなごとき思出おもひだす。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長吉ちやうきちはふと近所の家の表札へうさつ中郷竹町なかのがうたけちやうと書いたまちの名を読んだ。そして直様すぐさまころに愛読した為永春水ためながしゆんすゐの「梅暦うめごよみ」を思出おもひだした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
不図ふつとさう思出おもひだしたら、毎日そんな事ばかり考へて、可厭いや心地こころもちになつて、自分でもどうかたのかしらんと思ふけれど、私病気のやうに見えて?
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「躰も無論惡いが」と暫らくして友は思出おもひだしたやうに、「それよりか、精神上せいしんじよう打撃だげきはもツと/\胸にこたへるね。」
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
のせ亥刻過頃よつどきすぎごろ鈴ヶ森迄歸り來り候處不※ふと彦兵衞の事を思出おもひだし去年此所で御所刑に成りし彦兵衞は正直者しやうぢきものゆゑ勿々なか/\人殺ひとごろし夜盜よたう等は致すまじ此盜人は外にあらんと申事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうかといつてあたらうとするのには猶且やつぱり火傷やけど疼痛いたみくはへるだけであつた。かれ思出おもひだしたやうにいてはまたいた。つひにはつかれてしく/\とたゞこゑんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つていふはなし思出おもひだして「おぢさん、ライオンはなれたらねづみでもひませんか」と動物園どうぶつゑんのおぢさんにきました。すると、おぢさんのこたへはこうでした「すぐつちまふ」
かつ自分じぶん一人ひとり毬投まりなげをしてて、れとれをだましたといふので、自分じぶんみゝたゝかうとしたことを思出おもひだしました、それといふのもこの不思議ふしぎ子供こどもが、一人ひとりでありながら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
幼い頃見た写真がすぐ思出おもひだされた。けれど想像とはまるで違つてゐた。野梅やばいの若木が二三ぼん処々ところ/\に立つてるばかり、に樹木とてはないので、なんだか墓のやうな気がしなかつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
なくしたをとこが、そのなくしたといふたからをばわすれぬためし如何どん拔群ばつくん美人びじんをおせあっても、それはたゞその拔群ばつくんをも拔群ばつくん美人びじん思出おもひださす備忘帳おぼえちゃうぎぬであらう。さらば。
過去くわこ思出おもひだすのも不好いやだ、とつて、現在げんざいまた過去くわこ同樣どうやうではないか。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それとも、かつてつてたひととして思出おもひだすこともなくおたがひわすれられてゐたかもしれない。そして、またもしも電車でんしやで、おたがひ東京とうきやうてゐたならば、かほあはせるやうなこともあるかもしれない。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
いてえ、なにをするんだ。妻「あんま向脛むかうずねの毛が多過おほすぎるから三ぼんぐらゐいたつていや、痛いと思つたらちつたアしやうくだらう。亭「アいてえ。妻「痛いと思つたら、女房にようばうよろしくてえのを思出おもひだすだらう。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
石碑せきひちからだ==みぎけば燕州えんしうみち==とでもしてあるだらうとおもつてりや、陰陽界いんやうかい==は氣障きざだ。思出おもひだしても悚然ぞつとすら。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長吉ちやうきちは第一に「小梅こうめ伯母をばさん」とふのはもと金瓶大黒きんぺいだいこく華魁おいらんで明治の初め吉原よしはら解放の時小梅こうめ伯父をぢさんを頼つて来たのだとやらふ話を思出おもひだした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
思出おもひだしてると奇談きだんがあつた。はゝさい親類しんるゐ子供こどもや、女中ぢよちうや、とほくもいので摘草つみくさかた/\見物けんぶつことつた。其時そのとき生憎あいにくなにないので、採集袋さいしふぶくろ摘草つみくされてかへつたこともあつた。
ロミオ ほかのとくらぶれば彌〻いよ/\彼女あれをば絶美ぜつびぢゃとはねばならぬことになる。美人びじんひたひるゝ幸福しあはせ假面めんどもは、れも黒々くろ/″\つくってはあれど、それがかへってそのそこしろかほ思出おもひださする。
彼女かれは、それをじつとつめてゐると、また昔處女むかしゝよぢよであつたをりに、やまひめにつねさびしかつた自分じぶんこゝろ思出おもひだしたのであつた。まちあしは、十六のをはころからひとなみにすはることが出來できなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
坊主ばうず自分じぶんむかつておなことたのを、フト思出おもひだしたのが、ほとんど無意識むいしき挙動ふるまひた。トすくなからず一同いちどうおどろかして、みなだぢ/\とつて退すさる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今更いまさらふも愚痴ぐちなれど………ほんに思へば………岸よりのぞ青柳あをやぎの………と思出おもひだふしの、ところ/″\を長吉ちやうきちうち格子戸かうしどける時まで繰返くりかへ繰返くりかへし歩いた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あはれ其時そのとき婦人をんなが、ひきまつはられたのも、さるかれたのも、蝙蝠かうもりはれたのも、夜中よなか𩳦魅魍魎ちみまうりやうおそはれたのも、思出おもひだして、わし犇々ひし/\むねあたつた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は永代橋えいたいばしを渡る時活動する此の河口かはぐちの光景に接するやドオデヱがセヱン河を往復する荷船の生活をゑがいた可憐なるの「ラ・ニベルネヱズ」の一小篇を思出おもひだすのである
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あき納戸なんど姿すがたを、猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ鳴留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた。おあき撫擦なでさすつて、可愛かはいがつた、くろ、とねここゑ寸分すんぶんたがはぬ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
道子みちこ上野うへのから省線電車しやうせんでんしや松戸まつどえきりたが、てらだけは思出おもひだすことができたものゝ、その場処ばしよまつたわすれてゐるので、駅前えきまへにゐるりんタクをんでそれにつてくと
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
背中せなかからめて、づる/\ととほくへつてかれたやうにつて、雪枝ゆきえ其時そのときこと思出おもひだした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白菊しらぎくころ大屋根おほやねて、棟瓦むねがはらをひらりとまたいで、たかく、たかく、くもしろきが、かすかうごいて、瑠璃色るりいろ澄渡すみわたつたそらあふときは、あの、夕立ゆふだち思出おもひだす……そして
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あのときことはおわすれなすつてくださいまし……思出おもひだしても慄然ぞつとするんでございますから……」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
船蟲ふなむしむらがつて往來わうらいけまはるのも、工場こうぢやう煙突えんとつけむりはるかにえるのも、洲崎すさきかよくるまおとがかたまつてひゞくのも、二日ふつかおき三日みつかきに思出おもひだしたやうに巡査じゆんさはひるのも
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
晝間ひるまあのおはる納戸なんどいとつて姿すがた猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ啼留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた、おはる撫擦なでさすつて可愛かはいがつたくろねここゑ寸分すんぶんちがはぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかつたかい、一寸ちよいといま思出おもひだせないから、うしておきな、またいたらまをさうから。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかつたかい。一寸ちよつといま思出おもひだせないから、うしておきな、またいたらまをさうから。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しほ時々とき/″\かはるのであらうが、まつりは、思出おもひだしても、何年なんねんにも、いつもくらいやうにおもはれる。時候じこうちやう梅雨つゆにかゝるから、あめらないとしの、つきあるころでも、くもるのであらう。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときこと思出おもひだすもの、ほかなにようもれないときしとみけるのは。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふと思出おもひだしたれば、鄰國りんごく富山とやまにて、團扇うちはめづらしき呼聲よびごゑを、こゝにしるす。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
また思出おもひだことがある。故人こじん谷活東たにくわつとうは、紅葉先生こうえふせんせい晩年ばんねん準門葉じゆんもんえふで、肺病はいびやうむねいたみつゝ、洒々落々しや/\らく/\とした江戸えどであつた。(かつぎゆく三味線箱さみせんばこ時鳥ほとゝぎす)となかちやうとともにいた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此方こなたも、またはかから草鞋穿わらぢばきたやうなふるをとこつたので、わすれるともなくまぎれたが、祭禮まつり太鼓たいこふにつけて、夢見ゆめみみゝに、一撥ひとばち、どろ/\とはひつたやうに、むるばかり思出おもひだした。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とフト思出おもひだしたやうに花籠はなかごを、ト伏目ふしめた、ほゝ菖蒲あやめかげさすばかり。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、なくつても、はないでも、わすれもせねば思出おもひだすまでもなく、何時いついてると同樣どうやうに、二個ふたつ二人ふたり姿すがたまた、十ねんなからうが、はなからうが、そんなにあひだへだてたとはかんがへない。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
般若湯はんにやたうすこしばかり、さいはなまぐさくちにせぬ場合ばあひで、思出おもひだすにちやうい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪枝ゆきえは、思出おもひだすのも、口惜くやしさうに歯噛はがみをした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それ思出おもひだして、……ひとりでわらつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思出おもひだしたやうに唐突だしぬけにいつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、思出おもひだす。……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……思出おもひだす。……
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)